第131話 少女たちの戦い

 同じ部屋で行動しているわけだから、寝室の状態はすぐに知れ渡ることになる。

 いくら大きいとはいえ、さすがに俺がみんなと一緒に寝ることはまずいから床に寝ようと思う――そう提案すると、



「「「「「却下」」」」」



 間髪入れずに声が揃った。

 いつも仲がいいけど、この時ばかりはそういう関係を超越した一体感のようなものがあった。

 ――と、他人事のように考えている場合じゃない。


「とりあえず、ベイルは真ん中で寝るとして……」


 キアラが追い打ちをかける。

 さらに、全員がそれで納得しているかのように「うんうん」と頷いていた。それでいいのかよ。


「問題は……両サイドね」

「それについてですが、ひとつはわたくしで決まりでよろしいですわね?」


 当たり前だと言わんばかりに胸を張って主張するシャーロット。だが、これにすぐキアラが異論を唱えた。


「なんで決定みたいに語っているのよ!」

「わたくしはベイルさんの婚約者ですから当然ですわ!」

「元でしょうが!」

「別に、わたくしが嫌いになって婚約を解消したわけではありませんし――」

「じゃあ、好きなんですか?」

「っ!?」


 キョトンとした顔で、マルティナが派手にど真ん中を射抜いた。

 恐らく、本人的には純粋な疑問なんだろうけど……「このタイミングでぶっこんでいくのか」というのが全員の本心だろう。俺も含め、みんな驚きの表情を浮かべているし。


「す、好きとか嫌いとか、そういう問題ではなくて――」

「嫌いなんですか?」

「ぐっ……」


 マルティナ、意外としつこい。

 というより……なんだかいつもと様子が違うような?


「な、なんだか、マルティナさん、いつもと様子が違いませんか?」

「……愛の力じゃよ、シモーネ」


 シモーネも俺と同じ疑問を持ったようだが……ハノンのそれはちょっと違うんじゃないかなって思う。マルティナのことだから、そういう意図はないだろう。


 ともかく、このままでは埒が明かないのでクジ引きで場所を決めることとなった。


「恨みっこなしよ!」

「望むところですわ!」

「いざ、勝負ですね!」

「わわわ……」

「何が出るのか、楽しみじゃのぅ」


 五人はそれぞれ違った表情でクジ引きに挑むこととなった。

 結果が分かるまで、なんとなくその場にいてはまずいと思った俺は外の景色の風景でも見ていようと窓へ近づくと、


「あれ?」


 そこから見える風景に、違和感を覚えた。


「なんだ……?」


 薄暗い宿屋の裏庭に、何かうごめく影を見つけた。

 それが無性に気になった――というより、なんだか嫌な予感がした俺は、みんなの目を盗んで部屋の外へ出ると裏庭へと向かった。


 裏庭は静寂に包まれていた。

 月明かりのみを頼りに辺りを見回してみるが……人の気配は感じないし、特に怪しい場所も見受けられない。


「気のせいだったのか……?」


 変な緊張感があったから、見間違えたのかもしれない。

 そう結論づけて部屋へと戻ろうとしたら、


「っ!?」


 突如、体が動かなくなる。

 これは――拘束魔法か!?

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