ゴール
水谷一志
第1話 ゴール
一
俺たちのゴールは目前だ。
これは最後のモンスター……だろう。
今までのモンスターにないバカデカさ。あと何より目つきが違う。
人を人と思わないその傲慢な態度は俺の闘争本能をさらにかき立てる。
そう、俺はこいつを倒して早く俺の世界に戻らないと!
二
俺が「この世界」に召喚されて、早一ヶ月が経とうとしている。
その間、俺には新しい世界での仲間ができたりもした。
みんな本当にいいヤツらで、俺は新しいこの世界のルールなんかをそいつらから教わった。
そして、倒さなければならないモンスターたちがいることも。
もちろんモンスターでも命は大事だ。ただ、人を殺めるモンスターたちはやはり倒さなければならない……ということらしい。
三
そしてそんな戦闘員に俺は大抜擢された。
何でも剣裁きの筋がいいらしい。
元の世界では剣道をやっていたのでまあ慣れているっちゃあ慣れている。
あと、村の長老曰く、
「お前は向こうの世界の人間じゃろう。このモンスターたちのボスを倒さんと、向こうには戻れんのじゃ」
……とのこと。これはもう頑張るしかない。
四
それにしても俺の世界の剣道とモンスターたちの戦闘とはこうも違うのか!
本当に何から何まで違う。
でも一番違うのは、指先の使い方だろうか。
そこは集中していないとザコモンスターでも倒すことはできない。
そして俺は……、徐々に戦闘に慣れていく。
五
しかしこの「戦闘」という行為には、大きな矛盾があると俺は思ってしまう。
確かに人の命の方が重要だ。だから悪さをするモンスターたちは倒さなければならない。それは分かる。
あと、最後のモンスターを倒さないと俺が元の世界に戻れないことも。
……でも、それにしてもその行為は正しいことなのか?
モンスターにだって命はあるのだ。
それを奪うということは……、そう、それが仕方ないことなら強い責任を伴うだろう。
六
そんな思いも持ちながら俺は最後のモンスターの戦闘に参加する。
相手の攻撃。鍵爪の手で俺たちをひたすら引っかく作戦だ。
しかし相手の手のスイングは縦、横、斜めの3パターンしかないことに俺たちは気づく。
これなら他のヤツと協力し、何人かが相手の攻撃を止めてその隙に残りの戦闘員が急所を狙う、というやり方で勝てそうだ。
そして、俺たちはアイコンタクトでそれを連絡し合い、最後の一撃は俺が決めることになった。
今度の攻撃は……、斜めからの手の振り下ろし。
それを俺の仲間たちが止めに入り、大きなスペースがモンスターに生まれる。
その瞬間、その間合いを俺は逃さない。
そして、ベストタイミングでの俺の剣裁き!
「ウオォーーー!」
ついに最後のモンスターは倒れた。
それは、この世界にとっても俺にとっても大きなゴールとなった。
七
そして、俺たちと仲間との別れ。
これから先もしかしたら一生出会えないかもしれない。でも俺にはかけがえのない思い出ができた。
その思い出を胸に、俺はこれからも頑張っていきたい。
そして……、俺のゴール、俺の世界への帰還。
※ ※ ※ ※
「やったあ!ゲームクリア!」
僕は【おうち時間】にとあるゲームを約一ヶ月でクリアした。
うん?【おうち時間】?
これ、KAC2021の……【振り出し】じゃないか!? (終)
ゴール 水谷一志 @baker_km
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます