第3話 足ツボ

慌ただしく大橋さんとの交流を深め合った屋上での一件以来、私はクラスでも大橋さんとよく話すようになっていた。ただ、他のクラスメイトからは今でも怖がられているらしいけど……私は大橋さんの魅力を発信していこうと思う!


「バレバレだよッ!」


ーパシッ


教室移動中にノートで頭を叩かれた。

大橋さんは超能力者(本物)で、近くにいる人が何を考えているかを読むことができるらしい。


「勝手に読まないでよ!私のプライバシーは!?」


「近くにいたら勝手に聞こえてくるんだよ。てかなんだ、わたしの魅力を発信するって」


「そりゃあ、もうこのナイスなボディを!」


「Hなことはダメって、身体を大切にって言ってたのはどこのどいつだったかなぁ〜」


「ちょっ、それ言わない約束でしょ!!!」


掘り返された黒歴史によって、私は混乱状態に陥った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「どこ寄る?」


「ってなんでお前勝手について来てるんだ!?」


放課後、いつものように一人で教室を出て行く大橋さんを追いかけて二人で帰路についていた。めちゃくちゃ嫌そうな顔をこっちに向けて来てるけどモーマンタイ!


「モーマンタイじゃねぇよ!」


「痛っ!」


また叩かれた。しかも今度は手提げのバッグで。


「どこ寄るって言ってもなぁ、私はさっさと家に帰りたいんだよ」


「うんうん、大橋さんの意見も考慮して……公園に行こう!」


「どう考慮したらその結論が出てくるんだよ!!!」


という訳で市内で一番大きな公園にやって来た。今日の学校は昼までだったからか、公園には日向ぼっこをしたり、ランニングしたり、談笑を楽しむお爺さん、お婆さんが多かった。


「あれやろ、あれ!」


「あぁ?足ツボ?なんでそんな老人みたいなセンスしてるんだお前」


「いいからいいから、行こうよ!」


大橋さんの腕をぎゅっと掴んで足ツボ遊歩道へと向かった。


「友達と一緒とは珍しいねぇ、大橋巴」


遊歩道の中間地点で外から呼び止められた。

体型は細身で帽子を深くかぶっていて顔が見えづらい。

大橋さんの知り合いだろうか。


「この前はよくもやってくれたなぁ、大橋巴。テメェのせいで俺のメンツは丸潰れだ」


違う……この人、この前大橋さんがお金を貰ってたボスの下っ端だ。


「は、そっちから仕掛けてきたんだろうが」


「関係ねぇ、この俺『テレポートの海斗』様をあんな目に……ぜってぇゆるさねぇ!この前のお返し喰らいやがれ、と言いたいところだが、まずはそのお友達からだ!テレポート!」


「きゃあー!」


大橋さんと海斗の位置が入れ替わり、海斗の拳がこっちの顔面に向いた。私は必死で腕を盾に目を瞑った。


「いってぇ!!!!!」


「……?」


殴られない。半泣きの目を開けると、そこには足ツボの上であたふたしている海斗がいた。


「ブリング」


大橋さんの超能力によって私はその場を脱出した。


「大橋さん……?」


「こいつは自称テレポートの天才の海斗だ。こうやって自分と指定した人間の場所を入れ替えられるんだ。ただ、いつもそうやって移動してるせいか、足がとことん弱い。だからああやって足ツボで暴れてるって訳。」


「へ、へぇ……」


「付き合うのも面倒だし、帰るか」


私達は足ツボ遊歩道でキレ散らかす海斗を放って家に帰ることにした。可哀想だけど自業自得だし構わないか。にしてもダサかったなぁテレポートの海斗様w


ー後日、この件で私にもお金が入ってきました

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