命色師(めいしょくし)一部 最終話

@watakasann

最終話 新しい力


「お前、少し興奮しすぎていないか? 気持ちはわかるが」

「四年間誰とも話すことなく、色を作り続けていたのです。ちょっと我慢していただきたいわ」


確かにその通りなので、周りの者は納得した雰囲気にはなったが、


「もしかしたら、俺の結婚相手も・・・・・」

「もちろんです、ホーツ・ホーク。あなたの場合は使う色量が違うのですから、当然のこと、ですから結婚相手を選ぶときには、忍耐強いことを条件にするべきですね。でもこのことは昔から言われていることですよ、たとえ普通の結婚でも、フフフ」

少し楽しい雰囲気になった。


すると、珍しくユーシンが大きな声で

「奥様、あなたが創色した色を見せていただけませんか? 僕は創色師として、これほど色力を感じたことはありません。とても、感動しています」

「そうですか、それはありがとうございます。でもそれほど良い色ではないかもしれませんよ。あなたが力を感じたのは「私一人が作った色だから」なのだろうとは思います。色庫はどうしても大勢の創色師のものがありますから、一つのものにはなりづらいでしょう」

そう言って彼女はポケットから小さな袋を取り出した。色が入っている生成りの布袋だったが、それを持って、なぜかユーシンではなく、明らかにリュウリの方向に歩き出した。

そしてリュウリに

「手の平を出してもらえますか? 」

「え? なぜ僕に? 」

「残念ですが、あなたに誰よりも才能があるとか、特別なものを感じられるから、というわけではありません。私にはそういう力はないので。ただ単純に命色師の中であなたが一番若いからです」

そういってにっこりと笑いながら、広げられたリュウリの手のひらにほんの少しだけ色を出した。

「あ・・・」

リュウリが小さな声を出したかと思うと


「わあ!! 」とそこにいた多くのものの声が一つのざわめきになった。


「命色光だ・・・ララン・・・リュウリが」

「すごい! いいな! リュウリ!! うらやましいぜ」

「ああ! すごい!! 偉大な創色師は命色光を灯すことができるといいます! あなたは本当に優れた創色師なのですね」

「私が若い頃言っただろう? 君には創色の才能があるんじゃないかって」

「確かにそうおっしゃっていましたね、あなた。でもあの頃は・・・自分は才能も何もないというのに酔っていたのかもしれません。若かったので、そういう時期だったのです。ではあなたはもしかして、このことで、私との結婚を決められたのですか? 」

「まさか! 」「よかった」

リュウリ以外のものは蝋燭の明かりのように灯ったままの光を見ながら、そんなことを話していたが、リュウリは真剣にその自分の光を見つめながら、


「ララン、ララン、とても薄い緑色だよ、僕らの町の・・・色石の山の色だ。」

「リュウリ、良かったわね、おめでとう」


 もしこれが何もない平和な時代であれば、本当にみんな喜ぶだけになっただろう。しかしリュウリのこの新しい力は、透明な剣に対する大きな武器であるということをみんな分かっている。だからこそ、キリュウも夫人も、少し冗談のようなことを言ったのだ。

しかし、夫人は今度はがらりと雰囲気を変え、凛として、リュウリに言った。


「良かったですね、あなたの心と色が完全に一致したときに、光が発すると言われています。命色師発祥の地の山の色、そうですね、そう、この色は特別な色」


そうして、彼女は小さな色袋を手に持ち、高々と上げた。


「これから多くの困難が待ち受けています。

しかし

この色がやがて世界を救う色とならんことを!! 」


勝利の雄叫びのようであった。



        第一部   終



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