自分の推しが最高すぎる

昼の猫

第1話     推しが尊い

多紀沢たきざわ悠莉ゆうり


僕の、一番の推しだ。




「ちょっと!東雲しののめくん!東雲 ゆうくん!!」


はっと、声をしたほうを振り返る。


「やっと気づきました!文芸部のお話で、ちょっといいですか?」


僕の名前を呼んでたのは、同じ文芸部のおり日芽香ひめかだ。


「あ、おりひめちゃん。いいよ。」


そう答えると、


「やめてくださいよ、『おりひめちゃん』って呼ぶの!」


と、頬を膨らませ、怒ってきた。


「ははは」


と笑って受け流そうとしたが、


丸山まるやま先輩に、本の締め切り遅らせてもらうようお願いしたの誰なんですか?取りやめてもいいですよ?」


と脅されたので、本気で謝った。


「もー、仕方ないですね!じゃあ、私と付き合ってくれたら許し…むぐ。」


おりひめちゃんの口をふさいだのは、多紀沢君だ。


「学校でいちゃつくなー。東雲も、うれしそうな顔するなよ、非リアが全員嫉妬するぞ。」


僕は多紀沢君が一番の推しなので、嬉しくないですよ、と言いそうになって、口をつぐむ。


その代わり、


「ってことは非リアの多紀沢君も僕に嫉妬してるんですか?」


とからかう。


すると


「はぁ?ちげえよ。」


と乱暴な口調で、多紀沢君が言った。


けれど、頬も耳も真っ赤になっている。



 あー、本当に僕の推し様はかわいい。



「はいはい、そちらこそイチャラブしないでください。」


おりひめちゃんが、ポニーテールの髪を揺らしながら、僕の腕をつかむ。


「じゃあ、さよならっ!」


推し様に挨拶をして、文芸部の部室に向かった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る