『恋愛部』という部活を金髪色黒のギャル先輩と始めたら、卒業式で黒髪清楚な先輩と付き合うことになりました

華川とうふ

恋のゴール

「ねえ、後輩君。恋愛におけるゴールってなんだと思う?」


 卒業式も終わって、卒業証書とかすみ草と淡い紫色の花のコサージュを胸に飾ったミズハ先輩は俺にそう聞いた。

 初めて会った時と同じセリフ。

 あの時は夏服のセーラー服がまぶしくて、目を細めた。そして、あのとき、先輩の水色の下着がこっそり見えていたのは今でも内緒にしている。


 だけれど、今、目の前にいるミズハ先輩は真っ黒な冬用のセーラー服をまとっている。

 薔薇よりも濃い紅のスカーフが先輩の白い肌とカラスの濡羽色の髪を引き立てている。


 ミズハ先輩は美人だ。

 初めてミズハ先輩をみたときもそう思ったけれど。

 あの時の先輩は日焼けして、髪もヤンキーみたいな金髪だった。

 最初はどうしてこんなギャルが俺に話しかけてくるのか分からなかった。

 だけれど、先輩のことを知っていくうちに先輩はギャルなんかじゃなくて、海の方の街出身で、日焼けをして髪が金色に見えるのは海の潮水のせいだって。


 ギャルみたいな見た目をしていたミズハ先輩はあの日、俺に話かけた。

「恋愛におけるゴールってなんだと思う?」


 正直、意味が分からなかった。

 その時の俺は高校デビューをしそびれたぼっちの陰キャだったから。恋愛どころか、友だちもいない。

 そんな俺はミズハ先輩に出会って変わった。

 ミズハ先輩のおかげで彼女はできなかったけれど、友だちはできて充実した高校生活が送ることができるようになった。


 それもこれも、ミズハ先輩が始めた『恋愛部』のおかげだ。

 最初はそんな部活がみとめられるなんて信じられなかった。

 だけれど、ミズハ先輩は恋愛小説研究会なんてものをつくって、そこで古今東西とわない恋愛小説を読むという建前であっという間に部活を成立させてしまった。

 だけれど、現実は物語のようには上手くいかない。

 昔のライトノベルみたいになんだかんだあって部員が増えるなんてことはなかった。

 恋愛部は俺とミズハ先輩の二人きりで終わってしまう。

 ミズハ先輩が卒業すれば俺がたった一人の部員。部員が一人では部活は認められない決まりだ。だからミズハ先輩は俺を恋愛部に入れたのだ。ミズハ先輩の卒業は、恋愛部の廃部を意味する。


 ミズハ先輩との大切な思い出の場である恋愛部を残そうと俺は頑張って勧誘をしたのに、どうしてか誰も入部してくれなかった。


 ミズハ先輩との日々は楽しかった。

 恋愛部の名前のもと、一緒に読書をしたり、映画を観たり、休みの日には海に行ったりした。


 季節はめぐって行くうちに、ミズハ先輩の肌は白くなり、髪も海に入るのをやめてから本来の美しい黒にもどっていった。

 清楚系で正直、すごく好みだった。


 そんな先輩が卒業する。

 せめて、先輩との楽しい日々を送ったこの恋愛部をずっと残しておきたかったのに、自分の無力さが悔やまれる。


「恋愛におけるゴール……正直、俺にはまだ分かりません」


 俺は正直に答えた。あのときと同じ答えを。

 そうすると、ミズハ先輩はにっこりと微笑んで俺に手を差し出した。


「今度は部活ではなく、私と一緒に恋愛がなにか学びませんか?」


 俺とミズハ先輩はこうして、付き合うことになったのだった。

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『恋愛部』という部活を金髪色黒のギャル先輩と始めたら、卒業式で黒髪清楚な先輩と付き合うことになりました 華川とうふ @hayakawa5

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