その67 二拠点の畑
「スミタカさん大胆でしたね」
「クソ寝相が悪かったやつがなにを言っているんだ?」
「まあまあ、収穫に行きましょうよ」
翌朝、なんのイベントも起こらなかったテントを片付けて俺とネーラ、それと首に足四の字固めを決めていたフローレを連れて畑へと向かう。いつもの調子ならかなりの収穫が見込めると思うがどうだろう?
土地がやせていたことが影響しているとまずいなと考えながら現地に到着すると――
「あ! スミタカ! 見ろよこれ! お前達の言う通りすげぇなこりゃ!!」
「おお、良かったちゃんと育っていたか!」
「畑は広く取ったけど問題なさそうだよ。スミタカ君が来るまで手を付けていない」
「ありがとうベゼルさん。それじゃ一つ……」
俺はトマトを一つもいで口に入れると、いつも通り甘くて瑞々しい味が口に広がる。租借しながらみんなに指でオーケーを伝えると、わっとオーガ達が集まって実をもいでいく。
「美味しいー!!」
「あまーい!」
「おお、良かったなお前達! ……うめぇ」
「あなた、これも立派よ」
オーガの子供たちは満面の笑みでトマトを口にしているのが微笑ましく、掘り出したじゃがいもとサツマイモも立派なものだった。
「よし、これは焼いて食うか! ……いいか、スミタカ?」
「この畑はオーガ達にあげるから好きにしていい。折角だし、じゃがいもは面白い食べ方をしようか」
「面白い……?」
俺は焚火に濡れた新聞紙とアルミホイルを巻いたじゃがいもを放り込み、ほくほくのふかし芋を作り、クーラーボックスに入れておいたバターをひとかけら乗せて塩を少々振る。
「んー!!」
「お兄ちゃん美味しいよー!」
「あら、これは私達も初めてね」
「わたし、これ凄く好きですよ!」
即席で作ったじゃがバターは好評で、あちこちでエルフとオーガ達が談笑しながら朝食パーティとなった。
「みゅー♪」
「みゃー!」
「よしよし、お前達もご飯だな。シュネも缶詰でいいか?」
<私はなんでもいいわ>
足元の子猫を拾い上げてシュネの背に乗せながら尋ねると冷静にそう語る。……が、尻尾の動きは缶詰に対して相当喜びを表している。
離乳食と猫缶を用意し、子猫を膝の上に置いて食べさせてやる。基本的に食べなくてもいいらしいシュネだけど、三缶一パックをあっさり平らげていた。
……とりあえず畑はうまくいって良かった。効果はどこでも変わらないことが実証されたから恐らくドワーフの集落でも問題ないだろう。
スプーンの離乳食を食べる子猫たちを相手にしていると、リュッカが俺に近づいてきた。
「よう」
「ああ、リュッカどうしたんだ?」
「いや、改めてお礼をしにきたんだ。あれはすげぇ、見事な畑だ。俺達のために道具まで用意してくれて本当に感謝する」
「まあ俺にも神具の修復っていう目的があるし、もちろん手伝ってもらう。だから今後協力してくれたらいいよ」
「当たり前だ! このままさようならなんて言ったら母ちゃんにもだが、ご先祖様に怒られちまうぜ。もう行くのか?」
「ああ、ログハウスエルフ達を数人残して後はドワーフの集落だ、また来るよ。一応収穫後に水をやればまた明日たくさん収穫できるはずさ」
「わかった。野菜だけでも力がつくはずだ、鉱石堀りの荒事をするときは声をかけろよ?」
俺は笑って頷き、程なくして撤収作業に入るとそのままドワーフの集落へ移動。ドワーフの長であるグランガスさんが頭を掻きながら出迎えてくれた。
「おお、お主達か! すまんのう、気づいたらベッドの上で」
<……>
「お前、言ってないのか」
<何のことかわからん……あ、こら、髭をひっぱるな!?>
「みゅー♪」
「みゃーん」
相変わらず子猫に遊ばれる柴犬精霊が俺に目を向けて言う。
<一緒に居た娘は来ておらんのか?>
「黛か? 今日は仕事だから来ていない」
<そうか>
尻尾がへにゃりと下がったので、この前撫でられたのが良かったらしい。俺は苦笑しながらエルフ達へ声をかける。
「よし! 畑を作るか!」
「「おおー!!」」
――もちろん、畑作成は成功。これで信用ができた俺達は次のステップへと入る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます