異世界の村
「うわあ、おっきいね修ちゃん!」
「それだと俺が大きいみたいに聞こえるからな? ……とはいえ、確かにこれはでかい」
「お母さんみゃ」
「ですにゃ」
「え!?」
抱っこしているコテツがそんなことを言い出したので俺が驚愕の声を上げると、近づいてきた人が声を出す。
「あら、お客さん? 珍しいわね」
<この匂いは……?>
「おお、この大きい猫、喋ったぞ。もしかして? それと、お嬢さんはエルフってやつか……?」
「ええ、そうだけど?」
親父がでかい猫が喋ったのを見て顔を綻ばせるが、間違いなく違う気がする。それよりも金髪美人の方が返事をした方が重要だ。
「その耳は確かにエルフだ……。俺達の世界にも居るけど、エルフって人間を嫌っているはずじゃなかったっけ?」
「ああ、その認識は共通なんだ? 一応こっちの世界もそうだったよ。俺なんて一度磔にされたからなあ」
「磔!?」
「懐かしいわね、もう五年も前の話だし。あ、シュンスケは今大人しく寝ているわよ」
「オッケー、それじゃ住孝さん、ボクは息子のところへ行くからお任せしていい?」
どうやらシュンスケというのは住孝さんの子供みたいだな。真弓さんが俺達から離れてそういうと、旦那の住孝さんは笑顔で答える。
「おう。ネーラに引き継いでもらおう」
「なんかよく分からないけどいいわよ? イブも寝てるし」
「イブも真弓に任せておこうか。で、この人達だけど、元ドラゴンだった猫を探しているらしい。ここ数週間であちこちから猫を引き取っているからもしかしたらいるんじゃないかと思ってな」
「んー、ドラゴンの転生した猫ってこと?」
「あ、そうです! こいつみたいに喋るんですけど、いませんか?」
<ちっす、アイスドラゴン猫のスリートっす>
コテツを降ろしてスリートを抱えて差し出すと、前足を上げて挨拶をし、ネーラさんと呼ばれた金髪美人エルフが柔らかに微笑んでスリートの鼻に指をちょんと触れながら言う。
「こんにちは。ふふ、コテツ達みたいね♪ とりあえずお猫様がなにか知ってるか聞いてみようかしらね……って、あら」
ネーラさんが大きな猫に目をやり、俺もその視線を追うとすでに真理愛が突撃していた。あいつは怖いもの知らずか!?
<あら、そうなの? 大変ねえ>
「そうなの。ちゃんと見つけてあげないと可哀想だから、修ちゃん達みんなで探しているの!」
<喋る猫は私とコテツ、キサラギしか今のところ居ないけど……最近増えたから混ざっているかも?>
……大猫をフカフカしながら真理愛が幸せそうな顔で会話を試みているが、恐らくあの猫は――
「真理愛、急に傍から離れるのは怖いから止めてくれ……というか、大きな猫さん、あんた精霊だな?」
<あら、分かるの? 確かにそうよ、エルフ達の守護精霊が私、シュネルよ。みんなはシュネって呼ぶからあなた達もそれでいいわ>
「ありがとうシュネちゃん♪ 凄くふかふかー」
<あらあら、マユミやネーラ達とはまた違った性格の子ねえ。それじゃ、猫達を呼びましょうか。まだ別の村に行ってなくて良かったわ>
なんでも猫を崇めているエルフ達らしく、今は和解しているけど人間達と確執があってこっちの世界じゃ猫や犬といった動物が絶滅寸前にまでなっていたらしい。
それで住孝さんは俺達の世界で殺処分になる猫や犬を連れてこの島に放つことにした、と。魔物もいる世界だから村でしっかり管理するため、少しずつ引き取っているそうだ。
「猫ボランティアも信用されるまでなかなか時間がかかるからねえ。ちょうど今日が二回目だったんだ」
「お金とか大丈夫なんですか?」
「ああ、ウチはそれなりに遺産とかあるからね。それよりシュネ、頼むよ」
<ええ。マリア、ちょっと離れていてね>
「? はーい」
真理愛が不思議そうな顔で離れると、シュネが尻尾をピンと立てて遠吠えのような声を出した。
「おお、迫力あるな」
「コテツとキサラギを抱っこしている親父も絵面的には相当だけどな。お、集まって来たぞ!」
「わーい、いっぱい来たよ!」
村の奥から多数のエルフと共に親猫子猫関係なくシュネに向かって突撃してくる。さて、この中に居てくれると話が早いんだけど……
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