日常≠非日常
「――というわけだから、繁華街にはいかないこと。とは言っても警察の方が見回っているし、恐らく補導されるから行かない方が無難だと言っておこう」
「はーい! 本庄先生の彼氏もそこに居るんですかー!」
「な、何を言う!? 圭はそういうのじゃ――」
「圭っていうんだぁ、カッコいいよね、いいなあ先生」
「くっ……俺の先生が……」
「元々お前のじゃないから安心しろ霧夜。にしても、やっぱりこうなったか。キャバ嬢二人目らしいしな」
「前の殺人からまだ捕まっていないのが驚きだったぜ。若杉さん達も探していたんだろ?」
「母ちゃんが言うにはな。ただ、サラリーマンというだけじゃなかなか難しいよ」
前に情報を渡したらしい母ちゃんの言葉を借りるなら『普通のやつほど怪しい』らしい。繁華街には逐一警邏をしていたらしいけど、まんまとしてやられたと見ていいだろう。
そんな放課後のホームルームを終えて事件調査活動部室へと移動……の前に、少しクラスメイトに話を聞いておこう。
「なあ、ちょっといいか?」
「おう、なんだ神緒? 真理愛ちゃんと八塚さんどっちがいいかって話ならなしだぜ? 殺されるからな」
「知るか。お前、繁華街方面に家があったよな? なんか噂とか聞いたことが無いか?」
霧夜とは違い、たまに遊びに行く男友達に声をかけ、つまらない話を一蹴して尋ねてみると顎に手を当てて少し考えて口を開く。
「……いや、特には無いな。てか、キャバ嬢事件のことだろ?」
「ああ、今日もニュースになっていたし近くなら目撃者とか怪しいやつとか聞いたことが無いか?」
「それが意外と無いんだ。昨日の夜中に起こったらしいけど、キャバ嬢が発見されるまでかなり時間がかかってた、くらいかな?」
「そんなもんか……」
「あんまり喋るなって言われてるのかもしれないし、こんなもんだろ? まあ、今朝は警察とテレビをめちゃ見かけたけどな」
そう言いながら友人は笑いながら教室を出て行いき、霧夜が他の生徒にも聞いてみるも、あまり有力な情報が無いことに嘆息して俺達も教室を出る。
一応、真理愛達を迎えに行くが、教室には居なかったので先に部室へ行くことに。
「真理愛と八塚に期待かな?」
「あの二人、昼休みに来なかったもんな。今も聞き込みをしてそうだぞっと」
「あ、来たわ。シュウ兄ちゃんお疲れ様。霧夜さんも!」
「お、フィオちゃん元気そうだな! エリクも!」
「ああ、霧夜さんおつかれー」
部室にはフィオとエリクが来ていて、ソファに座ってコーヒーを嗜んでいた。周囲を見渡してみるも、若杉さんと宇田川さんはおらず、二人だけだった。
そんな俺の疑問に気づいたのか、フィオがコーヒーを淹れながら俺達へ言う。
「若杉さんと新しい人は電話がかかって来て出て行きましたよ。繁華街とかいうところへ行ってくるんだそうです」
「ああ、向こうに行ったのか。なら、若杉さん経由でなにかわかるかもしれないから、今日は適当にくつろぐか。先生もいないし、外の調査はできないしな」
「だな。ここと外、若杉さん達忙しいよな……」
コーヒーを受け取りながら霧夜が首を振る。まあ、向こう側のことはなるべく俺が片付ければいいだけなので、早いところ情報を手に入れたいところだ。
「ごめん、遅くなったわ」
「やっほー! 修ちゃんごめんね、ちょっと校内で聞き込みをしてたの」
ソファに座ると同時に八塚と真理愛もやってきて慌ただしく部室に入って来る。
「おう、お疲れ。こっちは大した話は聞けなかった。若杉さん達も捜査に出ているらしいぜ」
「あら、そうなの? なら今日は外には出られないか……」
「ぶにゃーん」
「おう、スメラギも来ていたのか」
考える仕草をする八塚の足元にスメラギが居たので抱き上げると、真理愛が入り口に向かって声をかけた。
「千恵美ちゃん、入ってきていいよー!」
「ん? 誰か来ているのか?」
「うん。新聞部の子で、キャバ嬢事件を調べているんだって」
新聞部……なるほど、独自調査でもなにか知っていれば――俺がそう思った瞬間、その女が入って来た
「はーい! 今、ご紹介に預かりました『羽須 千恵美』、新聞部の二年ですよ! 千の恵みを与える美しい女……。それがわたし……!」
「おこがましいわ」
「ああっ!? 魔法のように締め出された!?」
――こいつはきっと役に立たない。俺の勘がそう言っていた……
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