第3話 追憶の聖女



 あの人達が笑う声が聞こえる

 失った景色の中でこだましている


 思い出は綺麗 記憶は芸術品のよう

 手にとって触れたくても 実体がないから


 幸せそうに笑う人達の姿が見える

 楽しそうな笑顔が増えていた


 アルバムをめくる手を 写真を見つめる目を

 ここで止めてしまっても きっとそれは永遠に変わらない


 どんな場所で どんな風に どんな言葉で 触れ合ったか

 思い出せる 何度でも





「ストーリー」


 その聖女は、「どうして?」と言った。

 煉獄の谷の底で、足掻きながら「なぜ」と呟く。

 それでも彼女は、足を止めない。

 必ずまた、元の場所に戻るのだと、強い意志を秘めて。


 たとえ命の灯火を消そうと、炎が迫っていても、彼女は最後まで諦めなかった。


 やがて聖女の想いは報われる。

 彼女の真摯な思いが、かつて生きた過酷な世界に、奇跡を芽生えさせた。


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詩集 煉獄の谷の聖女 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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