フローラルパンジーの伝承
仲仁へび(旧:離久)
第1話
美しい花が咲き乱れる国。フローラルパンジーにはとある伝承があった。
国の中心にある水晶の光が三つ灯った夜に、空を見て星の軌跡に願いをかけると、その願いが必ずかなうというもの。
水晶が三つ輝く時というのは、歴史の切り替え時の事だ
フローラルパンジーでは、五百年事に新しい時代の幕開けとして、盛大な祝いを催す。
それは、歴史時計が三つ光り輝く時に行われるものだった。
時間をはかる砂時計ならぬ、歴史の経過をはかる水晶時計。
そんな伝説があるものだから、その日は多くの人々が夜更かししていたのだった。
そう、今日こそが伝承に謳われるその日だった。
歴史が変わる瞬間。
それに立ち会いたいと思っているのはその男性も、他の人間と同じだった。
男性はいつも部屋にこもっていて、機械とたわむれているような人間だ。しかし彼にだって、ロマンチストな面はある。
彼は、機械人形に思いを寄せていて、その人形と結ばれたがっていた。
しかし、世界では機械人形との婚姻は許されていない。
だから、思い人である機械人形を人間にしてほしいと、星に願いをかけるつもりだった。
しかし、その日の空は生憎、雲がかかっていた。
風の流れ次第では、空が見えるかもしれない。
だが、男性がいる地域にいては、それも危ういかもしれなかった。
急いで旅支度をした彼は、遠くへ向かった。
風向きを計算して、夜行列車にのって、空が見える場所へ。
やがて深夜になろう頃合いに、彼は星空が綺麗な場所にたどりついた。
流れ星は、時々きらきらと輝きながら空を駆けていた。
男性は夢中になって願いごとを唱えた。
そしてその後、遠くへ声を運ぶ機械、電話を手にした。
けれど、通話相手は無機質な声と、機械的なセリフで応答するだけだった。
男性は、やはり伝承はただのおとぎ話だったと判断した。
しかし翌日、思わぬニュースが世界を駆け回った。
資源大国である国が、機械人形との婚姻を認める法律を発表したのだ。
男性は喜んで、機械人形と共にその国に向かい、プロポーズをした。
フローラルパンジーの伝承 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます