バレエの勧め

村ちゃん

第1話 バレエがやりたい!!

私が初めて見たバレエ。

それは姉がバレエ教室でレッスンをしている姿だ。


バレエ教室と言っても週に一回地域の公民館の一室を借り、バレエっぽいことをやるクラブみたいなものだった。


なんせ、私が生まれ育ったのは鹿児島。しかも山奥のド田舎。

基本的に車無しではどこにも行けない。クラスメイトは10人前後。進学先はほぼ一択。私が13歳の時に町に初めてコンビニができた。あの時は町中の人がコンビニに集まり大行列が出来ていたものだ。


町にはバレエに触れる機会すらなかった。多くの人はバレエがどういうものなのかすらも理解していないだろう。。。


母は同じ鹿児島育ちだが、市内の都会で育った。

そう、本当にバレエをやりたのは母だ。しかし、母が学生時代のころは、まだバレエはそれほど流行っていなかった。何より祖母が許さなかったらしい。というより、祖母は母にピアノを頑張ってほしいと思っていたそうだ。


大人になっても幼いころの夢を捨てられない母は、長女である私の姉に、バレエを習わせた。


しかし物事はそう簡単にはいかない。

そう、私たちはド田舎に住んでいるのだから。


ネットがまだ普及していない時代。母がどのようにバレエ教室を探したのかは未だに謎だが、、、

家から車で片道一時間の公民館でのバレエレッスンを見つけた。


ピンクのレオタード、フリフリのスカート、キラキラのバレエシューズを身にまとった四歳の姉を、週に一回バレエに連れて行った。


私が生まれたのは丁度そのころだった。


おとなしくて控えめな姉とは正反対だった私。

暴れん坊でよく泣いて、よく食べて、元気が有り余っている子供だったらしい。


あまりにも活発なものだから男の子に間違えられるのは日常茶飯事。

両親だけでなく、周りの大人たち、誰一人としてこの子供がバレエダンサーになるなんて想像しなかっただろう。



私は四歳になった。姉がバレエを始めた年齢。


母は基本的に私を姉のバレエ教室には連れて行かなかった。私を連れて行けば、教室で走り回り、騒ぎ立て、バレエのレッスンの邪魔になることが目に見えていたからだ。だからいつもは車で待たされていた。


しかし、当時の私は、バレエに対して異常なほどの興味を抱いていた。どうしてもバレエのレッスンが見たかった。母に「私も連れて行って!!」と毎回頼んでいた。あまりにもしつこいから母は根負けしたのだろう。

静かに見学すること。を条件にやっと連れて行ってくれたのだ。


初めて見たバレエは正直記憶にない。ただ一つ覚えていることはレオタードがものすごく羨ましかった。ということ。


そして、本気でバレエがやりたい!と思ったこと。


しかしそう簡単にはいかないのだ。。。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る