第8話 愛という感情


 王子を狙った人間はすぐに捕縛した。

 私のヒビもすぐに直った。


 王子の怪我はかすり傷だったようだ。

 手当は簡単な物ですんだ。


 けれど、もし私があの時、間に合わなかったとしたら?


 王子の事を考えると、胸が熱くなるような感覚がある。

 王子が危険な目に遭う場面を想像すると、冷静に思考できない気がする。


 これは私の、恋という感情なのだろうか。


 私が私でなくなるようで怖かった。


「どうした? 何か悩みでもあるのか」

「王子、私は怖いです。私があなたに対して抱く感情が、怖くてたまらない」


 王子は私を抱きしめて、安心させるように微笑んだ。


「大丈夫、その感情は愛というのだ。恐ろしい物でも、怖いものでもない。ただ己の感情がまなならなくなるだけのもの」

「私はこの感情が辛い。捨ててしまいたい」

「どうかそんな事は言わないでくれ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る