ぶつかり合いと、取り合い
「彩花は、小村さんを選んだ!」
「………っなんで、なんでそれを知ってるの?矢萩ちゃんから聞いたの?!」
「ああ、というか、彩花と俺の関係は初めから無かったんだ。」
「え……」
初めから、無かったって、どういうこと?
「彩花はずっと、小村さんだけを見てた。ずっと、振り向いてほしそうだった。俺がコクっても、偽カレカノ始めてからも……、ずっと、小村さんを好きだったんだよ……!」
苦虫を潰すように苦しい顔で、拳をぐっと、震わせていた。私は、頭の中が疑問だらけだった。偽カレカノ?なにそれ?どういうこと?ただ、それを聞かれないようにと、彼は話し続ける。
「彩花が苦しんでるのを、もう見たくないんだ………。どうか、彩花の“好き”を汲んでやってくれよ……。」
そう拓真が頭をあげたとき、彩花を責めたときのように、私の中の何かが切れた。
「……うるさい。」
「は?」
「だったら、あんたが幸せにしてあげればいいじゃない!笑顔にしてやればいいじゃない!私は、私は、あの子のことなんて、ちっとも好きじゃない!なんで私のせいみたいに言うの?!私はあの子とあんたの関係にこれ以上首を突っ込みたくないの!もう、あんたたちを、見たくもないの…………!」
だって私は、あんたが好きだから。どんなに意地悪されても、あんたが好きだから。それに、あの子のことは憎かった。元々、憎しみしか沸いてこなかった人だから。ただ、友達になれたのは嬉しかったけど……。
「分かった、分かったよ。じゃあ、俺ら、ライバルだな。どっちが彩花と付き合えるか、勝負だな。」
「あんた、今の話聞いてた?私はあの子のことが好きじゃないの!あんたにあげるって言ったじゃない!勝負とかじゃないから!」
「あっそ。まあ、そういうことで。」
じゃあな、と手を振り去っていく彼の背中は寂しげに見えた。
「んん~~っもう!!」
バシャバシャと、湯船の水を叩く。頭から離れないあの出来事にさっきから悩まされている。
好き?好き?嫌い?好き?
そもそも私、拓真のこと、ホントに好き?
最近は、矢萩ちゃんに謝らなきゃ謝らなきゃで、ずっと頭の中が矢萩ちゃんだった。学校でも、後ろの席の拓真のことなんか考えてもいなかった。あの、矢萩ちゃんの笑顔を、早く手に入れなければいけないような気がして……。彼女が誰かと話しているだけで、気が気じゃなかった。
これが、好き、だったら?
私は、誰がスキで、誰がキライなの?
ぶくぶかぶくふぐ。
口元まで湯船につかると息苦しくて、鼻がツンとした。
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