恋しくなんて
謝らなきゃ、謝らなきゃって、ずっと分かってるけど、言おうと、思うけど、矢萩ちゃんに避けられてる気がするし、それを見るともっともっと声をかけづらくなる。矢萩ちゃんは矢萩ちゃんで、友達と話しながらふとこっちを見ていて、私と目が合うと、さっと視線を逸らす。焦れったくて、むず痒くて、なんとも言えない感情だった。
自分の中の感情にも、薄々気づき始めているのに。
あんなに、休み時間に話しかけてくれた矢萩ちゃんの存在が消えて空虚感がするし、それより、なんか、分かんない、けど………。
矢萩ちゃんが、誰かにとられるんじゃないかって、焦る、最近。
いや、私が突き放したのに。やめてって、言ったのに。本当にそうなると正直、私の手に戻ってきてほしいという思いがあった。
可愛い顔も、間近で見られなくなって。
恋しいな。
……。
はっ!今、私なんてことを!思った!?
「小村さん、今日一緒に帰らない?」
そう誘われて、今日の帰路は拓真と並んで歩いている。なんの話があるのか、私は気になって仕方なかったけど、何も気のきく言葉がかけられず、無言で2人、足を進めた。
「彩花と、なんかあった?」
急に切り出されたのは、そんな言葉。
「え?」
「彩花、落ち込んでたから。」
だからなに?あんたは首突っ込まなくてよくない?そんな反論がよぎったが、たしかに、矢萩ちゃんが落ち込んでいるのは私のせいだと思う。
「う、ん。ちょっと、私が、言い過ぎちゃって……。」
そう彼から目を逸らすと、
「小村さんはっ!」
彼は急に立ち止まって、声を少し荒らげた。なんであんた、そんな怒ってるの?私、怒られるようなことしたっけ?
「小村さんは、彩花のこと、どう思ってるんだよ……!」
「!私、は……。」
そんなに取り乱している拓真を初めてみた。少し萎縮しながら、小さい声で、顔をうつむかせて答えた。
「友達として、なら、好き、だよ………?」
言ってから、頭に疑問が浮かぶ。拓真、なんで私と矢萩ちゃんの関係を知っているかのように言うの……?
そんなことを考えていると、はぁっ、というため息が上からこぼれた。そして、「知ってるかもしらないけど」とまた話始めた。
「俺はまだ彩花が好きだ。フラれても、諦めてない。今だって、どうすれば彩花がこっちを向いてくれるか、気づいたら考えてる。でも、彩花は……」
そして彼は、息をたくさん吸い込んで、はっきりと私に告げた。
「彩花は、小村さんを選んだ!」
背筋が、凍るようだった。
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