第3話「大学デート?」
「そう言えばさ、入学式の前に一回、学校行っておかない?」
「学校? まぁ、いいけど」
「よし、じゃあ明日ね、決まり!」
御坂の一言で、入学式前日に大学へ下見に行くことになった。
若干急ぎ目に言ってるけど、別に逃げないんだけどな……。
多少のめんどくさい気持ちはあるものの御坂の頼みなら行くしかなかった。それに、未だ失恋の傷も癒え切ってはいない藤崎にとっては気分の入れ替えにはなる。凄く楽しそうにしている表情を見て、「行かない」なんて言えるわけがなかった。
——そして、すぐに翌日になった。
「——よしっ、準備は済んだ?」
「うん……一応な。でもよ」
「ん?」
「大学って言ったって広いだろ? どこに行くつもりなんだ?」
「それは、うーん……あんまり考えてないけど、まああれじゃない? 私の学部棟と隼人の学部棟じゃない?」
「……それじゃあ、御坂の教育学部に行く感じ?」
「——うん、それと隼人の工学部もね?」
「まあ、それもいいか……受験も北海道でできたし、行ったことはなかったし、いい下見にはなるかな……」
「——いやぁ、それって受験する前に行くものだと思うんだけどな」
「っぐ……うるせ、いいんだよ。高校だって大して下見なんて行かなかっただろ……」
「高校は高校だよ、大学は割と人生かかってるよ?」
「いいんだよ、受かったし……」
「ふふっ……でも、隼人って最初は後期日程にしてたじゃん? そう考えたら、無理もないのかなぁ。」
「そうだな、でも御坂は来たことあるのかよ?」
「あるよ、オーキャンで一回だけ友達と行ったし」
「オーキャンか……北大のやつは行ったけどセンター試験で諦めたし、結局こっちの事はよく知らないんだよなぁ」
「でしょ? そんな頭のいい隼人にとってはいいことでしょ? っていうか、なんでそっちの受験やめちゃったのかって聞きたいくらいなんだけどね~~⁇」
全く、茶化すのはやめてほしいものだ。
御坂には言ってはいないが、センター試験後の判定もAだった。行こうと思えば二次試験の対策も済んでいるし、合格できることは八割型決まっているようなものだった。
それでも地方の国立大を選んだのは
「……皮肉か?」
「……さぁ、どうでしょうね?」
ニンマリと含んだ笑顔を見せる彼女。
いつも通りの表情を見て藤崎は少しドキッとした。
御坂は昔からよく笑う女の子で、クラスにいる誰とでも仲良くなれるタイプの人間でもある。そんな女子が含んだ笑顔を見せる時は大抵、裏に何かがある時だけだ——と特に乙女心が分かるわけでもない藤崎は勝手に思っている。
しょうもない妄想を膨らませた大学一年生は微かに驚き、肩を震わせた。
「な、なんだよ——その顔は」
「えへへ~~、どうだろうねぇ……当ててみなよ?」
「そ、それは無理だよ……」
藤崎は俯いた。
怪訝な視線を向けて、一度地面を見つめてそう言った。
「へたれ~~」
しかし、御坂は冗談交じりに言う。
「で、でも——俺には告る勇気があったぞ?」
「すぐ私のところに来たくせに……」
御坂がそう言うと、一瞬にしてお世話になった情景が思い浮かんだ。まったく、男の面子が立たん。いつになっても藤崎は世話を焼かれる弟的な立場になってしまうのは何が原因なのだろうか。優位に立てるのは勉強くらいだって言うのに、情けない話だ。
「そ、それは——違う」
「へへっ……なんか、自信なさげだけど?」
「う、うるせ……仕方ねえだろ」
頬を赤くして否定する藤崎。
ふと気が付くと強張った肩の筋肉もいつの間にか抜けていて、いつの間にか彼女のペースに持ってかれていた。
「——まあ、それはあとでもいいや……ほら、行く準備するよ~~」
「——あ、ああ。そうだな」
「っっ……」
「なんだよ?」
「い、いやぁ——こっちの話だから、なんでもないよ」
立ち上がった御坂の隣で睨みを効かせて問う藤崎だったが、御坂の笑みに結局のところの押され負け。進歩も糞もなかったが、これだけは譲ることもできない一歩だった。
そして、お互いに休日のお洒落な服に身を包み大学方向へと歩みを進めたのだった。
「よし、いこっ」
「うん」
ああ、なんでだろうか。
どうしてこんなにも楽しいのだろうか。
いつもただ、普通に話してきた幼馴染に、見慣れて飽きてきた可愛い顔をしている幼馴染に、ここまで癒されているのかは正直、良く分からなかった。
<あとがき>
こんばんは、歩直です。
リメイク版三話でしたが、どうでしたでしょうか? なんとか今までの調子を取り戻してほしいですね。よろしくお願いします。
PS:僕の作品ってラブコメばっかりだけど、女性の方も読んでいるのかな? そこらへんのラブコメよりかは女性向けっぽいけど?
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