第41話 親和性
「あのさ、そもそも人が竜と戦えるモンなのか?」
『普通は無理ね。飛び回られたら打つ手無いもの』
「だ、だよな...」
『だから神がこの子を授けて下さったのよ』
「へ? この子?」
『えぇ、この子...クロウは私と共に戦った仲間なの』
驚愕の事実! まさかクロウが!? えっ!? じゃあクロウって千年以上生きてんの!?
「さっきまでの小さいサイズのクロウは封印されていた姿って事か?」
『封印とはちょっと違うわね。力をセーブしている状態ってのが正しいわ。このデカさじゃ連れて歩けないでしょ? 普段はあの小さい姿でいるのよ。その姿を名前の由来にしたのはあなたも同じじゃないかしら?』
「だから名付けたの私じゃねぇって。けど、そういやタチアナも同じようなこと言ってたかもな」
『タチアナってクロウと一緒に居た娘よね? あの娘とも波長が合ってたみたいだけど、あなた程じゃなかったわね』
「私とも合ってたとは言えねぇけどな。二度も噛まれたし」
『あんなの甘噛みじゃない。ジャレてただけよ』
「...でも私はこいつを本気で殺すつもりでいたんだぞ?」
『封印された邪竜だって思ってたからでしょ? まぁ無理もないわよ。この子、見た目からしたら黒いし禍々しく見えるものね。でもね、とっても優しい子なのよ? 私があの邪竜を封印した場所をずっと守ってくれていたんだから』
「えっ? 千年も?」
『えぇ、そうよ。封印の力が弱まらないようにね』
「...私はそんな良いヤツを殺そうとしてたのかよ...」
『そんなに落ち込まないで。知らなかったんだからしょうがないわよ。それにもし、あなたが本気でクロウを殺そうとしたら、私が全力で止めてたから大丈夫よ』
「...そうか...」
『それとね、クロウはあの邪竜を倒せる者が現れるのを待っていたのよ』
「倒す? 封印されてるのに?」
『いつまでも封印し続けられる訳じゃないのよ。いくらクロウが頑張ってくれても、封印そのものが解けていくのは防ぎようが無い。遅らせるのがせいぜいなのよ』
「それじゃ今、封印が解けたっていうのは...」
『えぇ、経年劣化とクロウが封印の場所から離れた結果ね』
「えっ...それじゃ私のせい?」
『違うわよ。クロウが親和性を確かめて、セイラなら大丈夫って事であなたの側に居たんだから』
「親和性って?」
『魂が引き合うみたいな感じかしら。これが弱いとそもそもクロウが顕現することすら出来ないのよ』
「そうなのか? じゃあ、あの何かに呼ばれたような気がしたのは...」
『えぇ、クロウが呼んだのよ。ちなみに、この国の初代聖女から今までの聖女の誰一人としてクロウを顕現させることは出来なかったわ。セイラ、あなたが初めてなのよ』
「それってやっぱり私がアンジュの生まれ変わりだからか?」
『それが一番の理由なんだろうけど、それだけじゃないと思うわ。セイラ、あなたの魔力量って桁外れに大きいのよ。歴代の聖女達も生前の私でも遠く及ばないくらいにね』
「そ、そうなんだ。で、でもさ、所詮私も人の子なんだし、いくらなんでも竜には勝てないんじゃねぇかな...」
『大丈夫よ。秘策があるから』
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