第24話 食欲旺盛
タチアナは慌ててその生物をセイラから引き離す。
「こらっ! そんなの食べちゃダメでしょ! ペッしなさいペッ!」
そんなのってなんだ!? セイラは文句を言いたかったが痛さでそれ所じゃない。幸い甘噛みだったのか出血はしていないが痛いもんは痛い。セイラが睨み付けると、タチアナに叱られシュンとしている。
「セイラ様ぁ、申し訳ございません。お怪我はありませんでしたかぁ~?」
「いや怪我は無いがチチ、やっぱりそいつは危険な生物なんじゃねぇか?」
「う~ん、でも私には噛んだりしないし大人しいんですよね~♪ お~よちよち良い子ちゃんでちゅね~♪ それとタチアナですぅ~」
「...チチ、まさかお前、そいつををここで飼うつもりか?」
セイラが信じられないとばかりにタチアナを見る。
「えっ!? ダメですか!? それとタチアナですぅ~」
「ダメに決まってるだろう? そんな得体の知れないモン。なぁ、ロ...リシャール王子?」
「そんなぁ~」
リシャールもそうは思うが実際の所、こいつの正体が不明のまま放り出す訳にはいかないことも事実だろう。
「まずはこいつを鑑定して貰おう。タチアナ、鑑定スキル持ちの神官様は今日いらっしゃるかな?」
「はい~ 常にお一人は常駐されておりますので~」
「では鑑定を頼もう。タチアナ、抱えて行けるか? 重くないか?」
「大丈夫です~ この子軽いんで~」
タチアナがそう言った時だった。その生物がいきなり飛んだ。
「あっ! どこ行くの~!? ちょっと待って~!」
慌てて追い掛ける。生物は菜園に飛んで行って、トマトやキュウリを育てているエリアの所で止まった。
「クゥッ!」
トマトに齧り付いていた。まさかこの見た目でベジタリアン!? 牙生えてるし爪も鋭いし、肉食にしか見えないが雑食なのかも知れない。リシャールはそう思った。
「お腹空いてたんですねぇ~」
「うわぁ、美味しそうに食ってんな~」
口の周りをトマト汁だらけにしながら一心不乱に食べている。トマトを食べ終わると今度はキュウリの方を向いて、
「クゥッ!」
「キュウリも食べたいの?」
「クゥッ!」
キュウリも美味しそうにポリポリと食べている。
「ホント美味しそうに食べますよねぇ~ 私、てっきりこの子肉食だとばかり思ってたんですけと、違うんですかねぇ~?」
タチアナもリシャールと同じように思ってたみたいだ。
「ど~せならもっと色々食べさせてみっか?」
セイラがまた面倒なことを言い出した。
「いやいや、こいつの鑑定が先だろ?」
「いいじゃねぇか。すぐ隣だし」
確かに次は果物エリアで、リンゴ、梨、ブドウなどが撓に実ってる。リシャールとしてはさっさと終わらせたいし、ぶっちゃけこいつの食性なんぞどうでも良かったのだが、
「仕方ないな。これで最後だぞ」
「おう!」
セイラが楽しそうなんで折れることにした。結果、与えた果物も全て平らげた。単に食い意地が張ってるだけなんじゃないのか? お腹が一杯になったのか、再びタチアナの腕の中で目を閉じている姿を見ながら、リシャールはそう思っていた。
「だがこうやって寝てると可愛いと言えなくもねぇか?」
そう言ってセイラが頭を撫でようと手を伸ばした時だった。
ガブッ!
「いってぇぇぇっ!!!」
手に噛み付かれたセイラの絶叫が再び響き渡った。
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