第8話 尋問
護衛2人の方もケリがついたようだ。賊が3人切り捨てられている。
さすがに無傷でとはいかなかったようで、軽傷ではあるが2人共怪我を負っている。リシャールは護衛に後を任せ、セイラの方に向かった。
セイラの目の前には、足から血を流し、苦しげに呻いている5人の賊共が転がっていた。良く見ると、5人共に淡く光るロープのようなもので縛られている。
「セイラ、これは?」
「これはな『バインド』っていう拘束魔法だ。魔力で作ったロープで縛ってあるんで縄脱けも出来ねぇ。盗賊なんかを生かしたまま捕らえるのに重宝してる」
「な、なるほどね。ち、ちなみにさっきの矢は?」
「火、氷、風、土の攻撃魔法を付与して放ってる。あ、それと命中補正も掛けてる」
「そ、そうなんだぁ...」
この娘はどれだけの魔法を扱えるのだろう? 攻撃魔法を矢に付与して放つ攻撃なんて聞いた事も無い。リシャール自身は、魔力はあるが魔法を扱えないので、羨ましい限りである。
そこへ賊共への処置を終えた護衛達が合流した。5人共絶命したらしい。身元を示すような持ち物は何も持っていなかったという。
「ただの破落戸じゃありませんね」
護衛の1人が淡々と語る。
「というと?」
「洗練された動きでした。その道のプロというか、人を殺す訓練を受けていると思います」
「ふーむ、だとすればお前達が苦戦したのも当然か」
この2人は、王族の護衛を担当する近衛の中でも特に腕利きで、リシャールも信頼している。だからこそ護衛を任せている。その2人が言うのだから間違いないだろう。
セイラは怪我を負った2人に回復魔法を掛けてあげた。一瞬で全快する。
「ありがとうございます。セイラ殿が居てくれて本当に助かりました。我々だけでは殿下の御身を守ること叶わなかったでしょう。心より感謝申し上げます」
「いいってことよ、気にすんな」
護衛の2人(名をカイン、アランという双子の兄弟らしい)に丁寧にお礼を言われ、セイラはちょっとくすぐったくなった。
◇◇◇
「さて、一応聞くが誰に頼まれた?」
喋る訳無いだろうと思いながらも、リシャールは賊共に尋問した。尋問中に死なれても困るので、セイラに頼み回復魔法で止血のみの治療を行った。全快はさせていないので、痛みは継続していることだろう。
「......」
案の定、黙りである。しかも無表情である。そこでセイラが、
「お前ら、ロッサムの町から後をつけて来てたよな?」
そう言った瞬間、賊共の表情が僅かに変化した。リシャールはロッサムの町で馬車に乗り込んだ際、セイラが後ろを気にしていた事を思い出した。
「ロー...王子がロッサムに来ることを予め知ってて先回りしてたってことだよな?」
またもやローリーと呼びそうになったところに、リシャールの人を殺しそうな視線を感じたので慌てて言い直す。すると今度は露骨に賊共の表情が変わった。
「王子がロッサムに来ることを知ってるのってどれくらい居る?」
「限られた者だけだ」
「そりゃそうだな。王族の行動をおおっぴらにしてたら、命がいくつあっても足りねぇわな」
そう言いながらセイラは、リュックの中をゴソゴソ漁り出した。
「何してんだ?」
「いや、確かこの辺りにメンテ用の工具がいくつか...あぁ、あったあった」
セイラがリュックから取り出したのは、なぜかペンチだった。
「そんなもの何に使うんだ?」
「爪剥ぎ用」
「つ、爪っ!?」
「もしくは歯を抜いてもいいけど」
「拷問用!?」
「だってコイツら、王族の情報を知れる立場に居るような、身分の高い連中に雇われてんだろ? そう簡単に口割らねぇだろ?」
そう言ってセイラは、ペンチをパチパチ鳴らしながら賊共に近付く。賊共がさすがに怯えた表情を見せた。
「待てセイラ! ちょっとそれは...」
リシャールもかなり引いてる。
「ニッパーの方が良かったか?」
「そういう意味じゃねぇ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます