詫び石25つ目【よくある質問:クエストクリアの条件】

「出しゃばる、って……」

「そのままの意味だよ」



 涙に潤むアイルちゃんの瞳も宝石によく似て綺麗だけど、彼女の泣き顔は嬉しくない。



(まずはクエストクリアのターゲットを集中させて……)

『ターゲットNPCのステータスを変更します。反映に時間のかかる恐れがあります、少々お待ち下さい』



 アナウンスと共に、先ほどまで一体ずつ細かく振り分けられていたゴブリンの攻撃力・防御力・HPがある1体のみに表示される。

 恐らく“奴”が群れの主なのだろう。



(えっと……味方のステータス操作はどこだ……?)

『警告。このアクセスは禁止されています。このアクセスは禁止されています」

「……」

『不正な操作が確認されました。5秒後に元の画面へ戻ります』

「グギュルルルルッ!!」

「ギギギッ!!」

『5、4、3……』

「……うるさいな……」



 ――……どいつもこいつも、アイルちゃんとルロちゃんの笑顔を邪魔するな。


 思わず強い言葉が心から漏れてしまい、直後にハッとした。

 な、なるほど……強おじの言っていた『魔王の適正』はこういう意味だったのか……!! 2人への愛が溢れすぎて危うく闇落ちするところだった!!



『……勇者の称号を確認。操作の権限を付与しました』

「えっ」



 ありがとう、強おじ! なんだかよくわからないけど、もらった称号のおかげでなんとかなりました!!


 どうにかして彼女たちに無敵モードを発動できないだろうかといじってみるが、うんともすんとも反応しない。

 ……と、その時。



『スタートまで……3、2、1……クエストを開始します』

「!?」



 咆哮を轟かせ、巨大ドラゴンとゴブリンが襲いかかってくる。


 俺を狙ってくれるなら何の問題もないのだが、どういうことか奴らの標的は俺の隣にいるアイルちゃんだった。



「にゃっ……!?」

「アイルちゃん、危ない!!」

「――っ!? ご主人様!!」



 可愛い彼女をかばうため前に出て両腕を広げ、ドラゴンたちを睨みつける。



「グギュルルルルッ!!」

「ギギギッ!!」



 巨大な爪が目の前に迫り――……瞬間、



『女神の加護を発動します』



 フォン……という音が耳に届き、1秒間モンスターの動きが止まった。

 そのまばたき1回分しかない時間の間に大空から降り注いだ落雷が大地を揺らす。


 そして、ドラゴンの巨体はゴブリンの死骸の上へゆっくりと崩れ落ちた。



「……えっ」



 今からいっぱいかっこつけて技を使うつもりだったんですけど……なんて考えは知ったことかと言わんばかりに、クエストクリアのファンファーレが鳴り響く。



「す……すごい! すごい!!」

「さすがです、ご主人様……っ!!」

「……なんとかなったぜ!!」

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