詫び石11つ目

 ギルドに入れてもらえたまでは順調だったが、ゲームの世界でもそう甘くできてはいなかった。



「チームメンバーは自分で見つけるんだぞ」

「チームメンバー……?」



 団長の説明によると、ギルドに入ったからといって依頼を受けられるわけではないらしい。

 今の状態はあくまでも『ギルドに入団している』だけであり、『チームに所属している』わけではないのだと彼は説明してくれた。


 ……ただの偉そうな人だと思っていたが、意外と新人に親切なんだな、団長……トゥンク……。



「チームメンバーは……まあ、名前の通りだが、簡単に言えば『一緒に旅をしてくれる仲間』ってことだ」

「仲間、ですか……」

「人数は最低3人、上限は……仲違いで面倒事さえ起こさなければ何人でも好きにしろ。ムラビトにはもうすでにエルフの嬢ちゃんが」

「ルロちゃんです!!」

「……ルロって娘がいるだろ。残り1人見つけてくればチームとして認めてやる」





 と、いう話をしたのが数十分前なのだが、



「あの、俺とチームを」

「お、俺の実力じゃアンタには釣り合わない……!! 他を当たってくれ!!」



 ……これの繰り返しで一向にメンバーが集まらない。



「クッ……! どうしてだっ!!」

「ご主人様……」



 心が折れかけてその場に崩れ落ち拳で床を叩くと、ついさっきまで女性団員にもらったみかんゼリーを幸せそうに食べていた可愛いルロちゃんが駆け寄ってくる。



「大丈夫だよ、ルロちゃん。俺が必ずチームメンバーを見つけるからね……」

「でも……」

「何も心配いらないよ。あと口のはしにみかん付いてるよ」



 その頭を優しく撫でたあと指の先で口元を拭ってあげると、ルロちゃんは顔を赤くして「ありがとうございます」と呟いた。



「……」

「……?」



 そういえば、俺がステータスをオープンされている時からずっと何やらこちらをチラチラ見てくる女性団員が1人いる。

 ルロちゃんの相手をしつつ色々と物を与えてくれていたため任せっきりにしてしまっていたのだが、やはり一言ぐらい何か言っておくべきだろうな。



「あの、」

「……っ!? な、何よ!!」



 立ち上がってその女性に向き直ると、彼女は被っていたフードの両側を持ち顔を背けてしまった。



「ルロちゃんの相手をしてくれてありがとうございました。色々デザートまでもらっちゃって」

「……」

「何かお礼をさせてください。俺にできる事なら何でもします」

「!!」



 途端に女性は目線をこちらに戻し、なぜか「ふふん」と胸を張る。



「言ったわね」

「?」

「じゃあ、あんた達。私のチームメンバーになりなさい!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る