その男、堂島道汚
富本アキユ(元Akiyu)
第1話 特別番組【その男、堂島道汚】
プルルルル……。プルルルル……。
寝ている私のスマホの音が鳴り出す。この音は、着信だ。
こんな真夜中に電話をかけてくるなんて一体誰なんだ。
「はい。もしもし」
頭は半分以上眠った状態で、電話に出る。
「あー、もしもしー。道汚ちゃん?ごめんねー、こんな夜分に。いやー、良いニュースがあるんだ。すぐ道汚ちゃんに知らせてあげたくてね、電話しちゃった。ははは」
その声の主は、富井誠。テレビのプロデューサーだ。
「ああっ、富井さん。いえ、大丈夫ですよ。良いニュースですか?どうしたんですか?」
「道汚ちゃんの半生を特集する特番が決まったんだ。二時間番組。夜七時からのゴールデン枠。その名も【その男、堂島道汚】どうよ?ビックリでしょ?」
「ええー!?ほ、本当ですか!?」
「本当だよ。それで来週の水曜日どうかな?ガッツリ取材させてくれない?」
「はい。大丈夫です」
「オッケー。じゃあ来週の水曜日、朝九時から朝日のスタジオで」
「はい。わかりました。よろしくお願いします」
それは突然の事だった。まさかテレビで私の特番が組まれるなんて。
しかもゴールデンで二時間。
私はとても楽しみにしながら、取材の日が来るのを待っていた。
そしてついに取材の日がやってきた。
朝日のスタジオに入り、富井さんに挨拶をした。
「富井さん。おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「おっ、道汚ちゃん。おはよー。早速なんだけど色々説明してもいいかな?まあそこの席にでも座ってよ」
「はい」
私と富井さんは、テーブルを囲み、座った。
「前に電話した時にも言ったように、今回の番組は2021年3月14日の日曜日の午後7時から9時まで放送予定の二時間の特番。番組のタイトルは【その男、堂島道汚】。で、番組の内容は、堂島道汚の半生。生き様を二時間がっつり紹介する。それで道汚ちゃんに興味を持った視聴者達が、道汚ちゃんが司会やってる【二十四の客人】とかも観てくれて、更に視聴率が上がったりしたらいいなって思う訳よ。スポンサー様は、牧野製薬。牧野製薬の社長さんが、道汚ちゃんの大ファンだって事で今回実現したんだよね」
「ま、牧野製薬ですか!?それは凄い!!大企業じゃないですか。私、牧野製薬の栄養ドリンクのファンなんですよ。よく飲んでます」
「そりゃー、いいね。それも番組内で言ってあげたら、社長さんも喜ぶだろうね。それで番組の流れなんだけど、まずスタジオでアナウンサーの梅田美紀ちゃんが司会進行をしてくれる。道汚ちゃんの簡単な紹介が済んだら、道汚ちゃんの人生の半生の再現VTRが流れる。スタジオで道汚ちゃんと梅田美紀ちゃん、他の出演者と一緒に観て色々質疑応答する。他の出演者は、アイドルの野村茜ちゃんとかお笑い芸人のピンク伊藤とか小説家でタレントの大島治夫先生とか色んな人が出るよ」
「さすがはゴールデンの特番なだけあって、凄いメンバーですね。なんだか話を聞くだけで緊張してきてしまいました」
「ははは。嘘つけ!顔が笑ってるぞ!ワクワクの間違いじゃないのか?」
「ワクワクと緊張の半々くらいですね」
「それじゃ、今日やる事はね。再現VTRを作りたいから、道汚ちゃんが生まれた時の話から子供時代、そして若手の頃。現在まで全部詳しく聞かせてよ。再現VTRの役者とかは、こっちで色々手配するからさ」
「はい。分かりました」
数日間かけて、私は自分の半生について取材された。
「ありがとうございました。今日までお伺いした話を元に再現VTRを作ります。VTRが完成したら再度スタジオで他出演者の人達を集めての収録となりますので、VTRが完成次第して、スタジオでの日取りが決まったらまたご連絡させて頂きます」
番組スタッフから説明を受けた。
私の半生か。この世に生まれてから55年。紆余曲折、確かに色々あったが、それを全国ネットに乗せて放送してもいいようなものなのだろうか……。
まあなるようになるさ。
それからしばらく経ち、【その男、堂島道汚】の番組スタッフから連絡が入った。
ついに私の半生が明らかになる。
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