第61話 ディオからの手紙?
結局、デュバルディオが一時帰国する事は叶わなかった。
その間、フレイラを異国に残し、副官や他の外交官に交渉を任せる訳にもいかず、また、日程調整も無可能だったのだ。
小柄で体力と馬力のある馬車馬を六頭繋いで休憩回数を減らしたものの、長距離移動は途中の馬車駅の都合や、馬や馭者の入れ替えなど、気軽に往復できるものでもなく、デュバルディオだけが単騎で駆け抜けて帰国する訳にもいかない。
システィアーナは、招待状を手に、夜会に出るのを諦めようか悩み始めていた。
「シス。そんなに、代理の心当たりがないものなの?」
「そうね。自分でも思ってたより、交際の範囲が狭かったみたい」
あんなでも婚約者。オルギュストに身を立てて、父か
ファヴィアンも考えたが、オルギュストの事があるために、口さがない者に何かしら言われそうで、ファヴィアンのためにも誘えない。
ユーヴェルフィオもなんだか忙しそうだ。
ロイエルドもエルティーネ同様兄弟姉妹がいないので、父方の
ハルヴァルヴィア領の管理人をしていたり、アレナルハウディス家の親族の殆どは遠方にいるので、滅多に顔を合わさないのだ。
「シス。デュー兄さまから手紙が届いたわ」
「これから帰る、かしら?」
ユーフェミアから受け取った、デュバルディオからの手紙。全体的にクリーム色の封筒で、開き口が花の形をしているのが可愛らしい。
「以外ね? こんな可愛らしい
⋯⋯まるで、女の子の選択みたい。
アルメルティアがわくわくして、
「ミア、メルティ。これ、ディオからじゃないわ」
「え?」
「でも、宛名はシスで、先出し人はデュー兄さま⋯⋯あれ?」
「ええ。解った? 封蠟を押した印章の紋はコンスタンティノス家のものじゃないわ。これは、このマーガレットの家紋はアルタイラ家のもの。フレイラ嬢の手によるものでしょう」
「でも、なんで、デュー兄さまの名で?」
「レースの取り引きの報告なんじゃないかしら? だから、代表者としてディオの名をサインしたんでしょう。字も、」
「うん、よく見たら、デュー兄さまの字じゃないわね。女性らしい、細くて小さい右に傾斜した字ね」
システィアーナはざっと目を通すと、苦笑しながら、何も言わずにユーフェミアに手渡す。
目を通したユーフェミアが眉根を寄せ、無言でアルメルティアに手渡した。
「な、な、なっ、何よ? これぇ~!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます