第59話 デュバルディオのお出かけ
婦人活動法人支援事業は、起業に携わったユーフェミアとシスティアーナから、下位貴族夫人と商家夫人の共同運営団体に主導権を移し、益々の発展を遂げる事を期待された。
城の外での初めての大きな行事に、アルメルティアは緊張と興奮気味で、多少のトチリもあったが、概ねうまくいったと言えた。
「これからは、あなたも相談役として、係わっていくのよ?」
「はい、姉さま。頑張りますわ」
「気負いすぎないようにね? 張り切りすぎると、視野が狭くなることもあるから、一度立ち止まって振り返るようにね」
王宮内官庁の一部に専用の窓口を設けてあるので、新たな代表者となった子爵夫人と城下町の商工会会長夫人の二人との間に、直通で連絡の取れるメッセンジャーを起用した。
城に戻ると、ちょうど出掛けるデュバルディオに遭った。
「デュー兄さま、お出掛け?」
「わりと大荷物ね?」
アルメルティアとユーフェミアが駆け寄る。
馬車の屋根の上に荷物を載せている所で、かなりの量だ。
「そう。ローゼンシュタットの通産大臣や外務相と会談して、こないだのマリアンナやエステルヴォム公爵令嬢のレースの話も纏めてこないといけないし、ついでにリングバルドにも寄って、様子を見てこようかと思ってる」
「様子?」
「本当に諦めたのか、また押しかけてくるつもりがあるのかないのか、とか? 最近どうしているのかなんかもね。
従弟に付き合いを考えると言われてしまうマリアンナ。
公務に勝手についてきた事や、人前でシスティアーナに恥をかかせようとした事が、よほど頭にきたようだ。
「え~? じゃあ、いつ帰るの?」
「ん~、来月の頭くらいかな?」
「え⋯⋯」
アルメルティアの質問に、デュバルディオがざっと日程を数えて答えると、なぜかシスティアーナが動揺した。
「ん? なに? 僕がいないと寂しい?」
「⋯⋯実は、月末の夜会のパートナーを頼もうかと思ってたの」
「うわっ、そうなの? 帰ってこようかな。その日だけ一時帰国とか⋯⋯
でも、なんで僕? いつもなら、
「その日は、都合がつかないみたいなの。お父さまも」
「僕は三番手か⋯⋯」
「大好きな」エル
当然だから反応しなかったのか、頼みにしようと思っていたデュバルディオが居ないと知って、次の候補に頭がいっぱいで訊いていなかったのか。ただの軽口だと流されたのか。
しばらくシスティアーナの顔を見ていたが、デュバルディオにも、同じく注視していたユーフェミアにも、判断はつかなかった。
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