第11話 変化

 一時は、公務も王家主催の行事も続いて王子達と共に行動することが多かったが、社交シーズンも終盤にさしかかり、議会も繁忙期に入って、春の花祭りまで大きな催しはない。


 ユーフェミアの公務や共同事業に携わる以外、王宮に出仕することも少なくなり、その分、自身に慰謝料として与えられた新しい領地や、父侯爵の代行業に力を入れるようになり、しばらくデュバルディオやエルネストと出掛けることもなく、王宮に出向かないので他の王子達ともひと月近く顔を合わせていなかった。

 フレキシヴァルトと会う機会がないので、エルネストにも会えていない。


 領地を抜ける風も温み、花の蕾も膨らみ始めた頃、王家の面々からそれぞれメッセージカードが花と共に贈られてきたが、丁寧に返事を書いて、システィアーナが刺繍したハンカチーフやストールなどを戸棚から出して来て、各人に似合いそうなものを添えて贈り返すのみとした。


 将来の女侯爵として、父の代行業務は学ぶことも多く、夜にはくたくたではあったが充実していた。


 ユーフェミアとの婦人ボランティア活動の相談で久し振りに王宮へ足を踏み入れると、懐かしさと共に、身が引き締まる思いだった。


 やはり、何十年か後に爵位を継いでも、領地には引きこもらずに、こうして王宮へ出仕しよう。


 改めてそう考えながら、ユーフェミアの執務室に向かう。


 途中の廊下ですれ違う文官達の中には、早春の園遊会以来、態度が変わった者もいた。

 エスタヴィオの従堂妹はとこ姫であるとの認識が今更のように広まり、たまに冗談のように言っていた『我が娘ユーフェミアと母親の違う • • • • • 双子』が本気なのだと信じられるようになったらしい。


(わたくし自身、何かが変わった訳でもないのに)


 ちなみに、システィアーナは知らぬ事であるが、以来態度の変わった者は、エスタヴィオにも、アレクサンドルやフレキシヴァルトにもリストアップされている。

 王族や貴族名鑑の内容が整頓されて頭に収まっていなかった者。

 システィアーナが、平生から王家と深い付き合いをしているにも拘わらず、今更のように宰相の娘で侯爵令嬢であるシスティアーナへの態度を改めな • • • くては • • • ならない • • • • 者。


 彼らは、王家に目をつけられたと言ってもいい。それも悪い意味でだ。


 変わらないのは、昔からの友人数人と、王家の面々、ファヴィアンやユーヴェルフィオなどの縁者や、アスヴェルや部屋付き侍女などの王家に直接仕える者たちだけだった。


 侯爵家の、まだ当主でもない小娘が、王家と親しいからと、一部の若い貴族達に反感を買っていたのだろうと思われた。


 エルネストとデュバルディオは、態度が変わった部類であるが、休日の遊びに誘うという変わりようなので、面映ゆいながらも、少しづつ受け容れていった。




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