第9話 街歩き──二度目も失敗?
果たして、結果は予想通りであった。らしい。
アナファリテに指摘され、システィアーナの都合に合わせエルネストに休みを与えたところ、次の日、どんよりとした元気のない姿で登城してきた。
「期待を裏切らない男だな」
なぜかこの場で茶を飲むユーンフェルトが、楽しそうにエルネストを眺めている。
「て言うか、ユンフェ
「こんな所とは失敬な。君の兄上の執務室だろう?」
両腰に手を当てて、開いた足を踏ん張るように立つデュバルディオ。
ユーンフェルトは、妹のお守りに飽きたらしい。
「いや、飽きたと言うより、必要なさそうだと思ってな?」
心を入れ替えたのか、大好きなレースに関する交渉だからか、真面目に受け答えし、輸入と交換輸入品の交渉から、技術者や工房の招致に関してまで、かなり真剣に取り組んでいるらしい。
「あそこまで何とか出来るなら、僕の口出しは不要かなってね。失敗してもいい。それもあの子の経験になるだろう?
いつまでも一から十までお膳立てしてあげていたんじゃ、あの子の成長にならないからね。時には突き放すのも『愛の鞭』だろう?」
「ユンフェ
「うーん? まあ、ローゼンシュタットの大使が寛大で、マリアンナに、より模範解答に近い答えを導き出せるように誘導してくれているみたいだ。大臣の方が困惑顔をするくらいにね」
「気に入られたかな?」
「どうかな。今回のみお試しって感じかな? エスタヴィオ陛下に箸にも棒にも掛からない相手と切り捨てられたのに同情されたか、あそこからの反省を見ての期待値でチャンスをくれたのか、とにかく今回の経験は、マリアンナの中で後の何かにはなるだろう」
ふうん? デュバルディオは理解はしたが納得は出来ていなかった。
嫌がらせしたりワガママ放題の後に、人前で濡れ衣を着せたのに、そんなに簡単に挽回できるのか?
「そんな事より、今はアレだよ」
ユーンフェルトは、腹でも壊したような顔色に背を丸め、それでもフレックの書類整理作業は手を抜かないエルネストを顎で指し示す。
「僕と同じ事、起こったようだね」
「おかしいな、シスは、異国の外交官相手でも、礼儀正しく相手をするし、気分を害するようなことはしないのに、エルネストの心を
フレックが首を傾げる。システィアーナの対人能力は信頼しているのだろう。
「それは、⋯⋯言ってしまうとなんだけど、『
エルネストの様子を見に来たのだろう、フレックの『執務室』なのに、新妻とは言え女性のアナファリテが居て、優雅に紅茶を飲んでいる。
「強調したところがキモだね。気があると気づいてない?」
「たぶん⋯⋯いえ、ほぼ確実に?」
「まだ、兄貴分の域を抜けられないのか⋯⋯」
「おかしいね? アナの言葉通りなら、男性との付き合いや異性を意識する事の楽しさを体験するための街遊びだったんじゃなかったかい?」
「一度や二度のデートじゃ目覚めないくらい、そっち方面の情緒は育ってないって事かな」
気長に攻めるよ。僕は誰かさんみたいに、期限を切られている訳じゃないからね。
デュバルディオは、来客用のソファに深々と身を沈めた。
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箸にも棒にも掛からない 如何にも日本(東洋)の
火箸ならあるかもなので、許してください🙏
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