第36話 お茶会でお菓子を
いつもは宮廷料理人の中から指名されたパティシエが茶菓子を用意するのだが、今回のこの内輪の茶会の菓子には、エスタヴィオの希望で、システィアーナが焼いた茶葉入りシフォンケーキや、南から取り寄せたカフィ豆の煮汁をミルクに混ぜて焼いたカップケーキなどが提供された。
「ドゥウェルヴィア公爵が拓いた港町シーファークの特産品、香り高い茶葉やカフィ豆、果物の砂糖漬けなどをふんだんに、かつ過剰にならないようにバランスよく使われた、わが
ここでも、まるで自分が作ったかのように自慢げに勧めるエスタヴィオ。
勿論、この場にいる誰もが、ドゥウェルヴィア公爵とシスティアーナ、エスタヴィオの関係は理解している。本当の意味で身内ばかりだ。
エスタヴィオの友人の枢機卿や医学博士も、幼少から公爵と共に王宮に出入りしていたシスティアーナとは顔見知りで、集められた王子王女の学友候補達の健康面や道徳教育などでも係わって来ていた。
「シーファークで、茶屋の主人の言っていた事は本当だったね。あそこで食べた菓子と同じ⋯⋯いや、こちらの方がより上品で甘い物が苦手な人でも食べ易く焼けている。美味しいよ。毎日イケる」
シフォンケーキを頬張りながら、デュバルディオが褒めちぎる。
婿に行けるよ発言以降、距離が近いデュオ。
いや、シーファークでも兄妹か友人を装って柔らかく手を握って歩いていたし、シルヴェスターでも頰に新年の挨拶と称して触れてきたし、実は前から近かった? と改めて考えてみるシスティアーナ。
元々王宮内での職務内容が一番近い事もあって、祖父も交え、ユーフェミアの次に交流は深いと言える。
きっちりとひとつひとつ確認していないからピンと来ないが、恐らく、オルギュストと正式に婚約解消してから更に、立ち位置が近くなった気がする。
隣国の王女を母に持つ第三王子。この国の法律で、他国の王侯貴族を母に持つ王子王女には、王位継承権は与えられない。
外戚の政治干渉や王位継承争いやそれに関するクーデターや武力行使などを回避するために設けられた決まりで覆ることはない。
だから、婿に入ってもいいと言う。
恐らく、多くの釣り書きにあったどの貴公子達よりも、エルネストやカルルデュワ、オルギュストよりももっと、侯爵家に益のある婿がねのように思える。
現国王の第三子で隣国の王家にも縁が出来る。
加えて優秀な官僚候補でもある。母クリスティーナ妃と共に、各国を廻り諜報活動も出来るし、それらから得た知識で外交対策も出来るし、語学も堪能。場合によっては領地管理も任せられそうだ。
「ん? 何? 僕に見惚れた?」
こう言う軽口も、他の人だとやや不快だが、デュオなら微笑んで聞き流せる。
──悪くないのかもしれない
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