第25話 謝罪
陽を逆光に立つ国王エスタヴィオ。
まだ冷たい風に靡く髪は黄金色。
淡い緑味が差すヘーゼルの瞳は、感情を見せず、ただこちらを睥睨する。
振り返り、すぐに草地に膝がつくギリギリまで腰を落としたカーテシーのまま、頭を下げ続けるシスティアーナ。
その側で、片手を胸に、利き腕を地に拳をついて上半身を支え
トレーを持ったまま蒼白になっている王宮奥殿の女官。
地べたに座り込み、カタカタ震えているリングバルドの侍女。
最後に、ドレスに赤茶の染みを広げて真っ赤な顔で柳眉を逆立てるマリアンナ。
エスタヴィオはある程度の流れは想像がついた。
「陛下⋯⋯」
味方が現れたと思ったのか、頰を染めて嬉しげに一歩踏み出すマリアンナ。
マリアンナの声を耳にした途端、リングバルドの侍女は地に額をこすりつけて謝罪を始めた。
「も、ももも、申し訳ありません。私めの失態でこのようなことに⋯⋯!!」
血の気の失せた、今にも倒れそうな顔色で、ベラベラと喋り始める。
実際、侍女は、生きた心地がしなかった。
マリアンナの指示通りに事を運べなかった上に、マリアンナ本人に茶をかけてしまった。
わざとではないが、それで笑って許すマリアンナではない。
どうしてこうなってしまったのか⋯⋯
「決して、決して計ってのことではなく、偶然といいますが、不幸な事故と言いますか⋯⋯」
「発言を許したか?」
「は?」
この国において一番身分の高い国王の前で、許可なく、当国の貴族籍でもない侍女が国王に直接言葉をかける。
不敬であった。
「何をしているのか、とは、そこの我が国の侯爵令嬢と、リングバルドの王女に問うたのだ」
侍女であるお前ではない──とは発せられなかったが、隣国であろうとも王族に仕える侍女だ。己の失態に気がついて、いっそ気を失えたらいいのにと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます