第25話 出迎え

 水平線に夕陽が見える港町。


 招待客がタラップを渡り、乗船していく。


 システィアーナと、ユーフェミアも、それぞれエルネストとディオの手を借りて馬車を降りる。




「ティア! ミアもディオも、一応無事だとは聞いているけれど、本当に怪我はないかい? 大変だったね」


 先に港に着いていたアレクサンドルが駆け寄り、どことなく艶の落ちた様子のユーフェミアに寄り添う。


「エルネスト、三人を護ってくれてありがとう。大活躍だったと報告を受けてるよ。

 だけど、まだ、騎士として経験を積み始めたばかりなんだから、無茶はしないで欲しいね。君も含めて皆を護るために護衛騎士がいるんだから。君に何かあったら、皆がつらくなるよ」


 エルネストには、褒められているのか叱られているのか判らないアレクサンドルの言葉に、肩を落とす。


「ああ、そんな顔しなくても⋯⋯ 何も、叱っている訳じゃないんだよ、君にも怪我をして欲しくないだけなんだ」

「解ります。武器も持たず、防具も身に着けず、未熟な私が飛び出しても怪我をするか最悪命を落とすだけだと言う事は。実際、護衛官に予備の剣を借りねば、最悪の事態を招いていた事でしょう」


 システィアーナやユーフェミアを庇いながら、護衛騎士の元へ下がるのが正しい行動だったのだ。

 彼女を護らなくてはならないと、頭に血が上ったのかもしれない。冷静とは言えなかった。


「そう言わないであげてよ。みんなを護って大活躍したんだから、まずは労ってあげて?」


 招待客がタラップを上がっていくのと逆行して、フレックが降りてくる。


「勿論、ミア達を護ってくれた事は感謝しているし、礼だって言ったさ。だけど、ただ、友人の弟でもあるエルネストにも怪我をして欲しくないだけなんだよ」


 王族につく護衛騎士は、近衛の中でも身辺警護に特化した専門家スペシャリストなのだ。

 それに、エルネストも公爵家の人間、王家の遠戚であり、彼自身も警護の対象なのである。

 その、警護対象が危険に飛び込んだのでは、護衛騎士も守りきれるものではない。


 フレックはエルネストの肩を抱き寄せ、さらさらの金髪を掻き回す。


「シスに格好いい所を見せられたんだって? 無事に守れてよかったね。⋯⋯親戚のおにいさまから脱却の糸口は摑めたかな?」


 にっこり笑って、手の甲でエルネストの頰を軽く撫でるように叩いた。


「⋯⋯え?」


 元々、王都に残してきた補佐官の代わりに、私設秘書としてついて来たはずなのに、ユーフェミアやデュバルディオに影や護衛騎士がついているはずなのに、自分を従騎士スクワイアとして残した理由は⋯⋯


 爽やかに笑いながら、ディオやユーフェミアにも声をかけていくフレックの後ろ姿をポカーンと眺めてしまった。




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