第12話 薄紅のお姫さま
色素の薄い白磁の透ける肌。
僅かに朱を差した、光の加減で時には橙色が混ざる
淡い
薔薇色の頰、サクランボの艶のある唇。
両親に愛されて大切に育てられたのがよくわかる、コロコロと笑う愛らしい少女。
先々代王弟を祖父に持つ事と、両親やまわりに愛され大切にされていた事と全身の色味からついた呼び名が『薄紅の姫君』
当時のシスティアーナは、本当にお姫さまのように扱われていた。
「てぃあね、お祖父さまにだんすならったのよ」
「わたくしも、
姿勢を確認するために鏡張りになったホールで、小さな姫君ふたりが自慢し合っている。
システィアーナが小さい頃は、まだドゥウェルヴィア公爵も王宮で政務に携わっていた。
ユーフェミアの話し相手兼学友の候補として最も有力とされ、頻繁に祖父と共に登城していた。
大抵の子供がまだ文字も読み書き出来ない幼児と呼んでいい歳でも、王女や上位貴族の令嬢ともなれば、手習い、ダンスや楽器演奏、礼儀作法などを学ぶのに時間をとられ、遊びの時間は少ない。
それでもまだ集中力が続かない幼女達は、ダンスホールで向かい合って床に座り、自慢話をしていた。
「ミア、システィアーナ嬢、床に座ると身体を冷やしてよくないから、休むのならあちらのカウチに行きなさい」
白磁の肌と薔薇色の頰や唇はシスティアーナとも似通っていたが、瞳の色は淡い青緑に見える。が、よく見るとユーフェミアと同じ、若草色にも藤色にも、ヘーゼルにも黄金にも見えるオーロラのような不思議な
シンプルなドレスシャツに脚が美しく見えるややブーツカットのシルエットラインをしたカーキ色のスラックス。
「あら、ちゃんと敷物を敷いてるから大丈夫よ」
「ダメ。ちゃんと座って。お行儀もよくないからね」
口を尖らせて反論するユーフェミアに微笑み返して、壁際のカウチへと促す。
「僕も一緒に座るから、休もうか」
爽やかに微笑んで、美少女との間に入ってユーフェミアの手を取り、カウチまで連れて行く、黄金色の髪を短く切りそろえたフレック。
「ほら、システィアーナも」
カウチは幾つか用意されていたが、その内の一つに、デュバルディオとエルネストも座っていた。
「エル兄さま、ごきげんよう」
「システィアーナ、疲れてない?」
「ううん」
喋ってばかりでまだ踊っていないのだから疲れるはずもなく。
クッキーを幾つか囓り、祖父が如何に優雅に踊るのかを自慢していると、ダンス講習会が再開される。
「さて、姫様方も、王子たちが踊っていたのをご覧になっていたでしょう? 踊ってみましょうか」
ダンス講師の微笑みに、ユーフェミアは嫌そうに、システィアーナはきらきらと目を輝かせて、カウチから降りた。
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