第24話 語学訓練再び
新年の外交も落ち着いて来たため、久しぶりに王女達と勉強会である。
そして、リアナは今日もカルルを喚びつけて、語学学習を同時に行おうとしていた。
「あら、タルカストヴィア外務官。お仕事はよろしいのかしら?」
「ええ。今は他国の使節団の訪問は落ち着いていて、一般的な通訳官を兼ねた文官達でも問題はありませんし、私は他国から戻ったばかりなので、議会に報告も済みましたし、今は長期休暇中なのですよ」
城下街の女子に人気の菓子店で買い求めたという、ふわっとしていてクリームたっぷりの焼き菓子を手土産にリアナと共に現れたカルル。
ユーフェミアは、まるでカルルが仕事をサボっていると言わんばかりに、少し冷めた湯でハーブティーを淹れる。
茶葉の種類やブレンドによってはぬるめの湯で淹れる方が美味しい事もあるが、提供されたのは、ローズヒップがメインにブレンドされたもの。
基本的には紅茶もハーブティーも98℃以上の空気をよく含ませた熱湯で淹れ、葉をシャンピングさせて淹れるものである。
しかし、ユーフェミア手ずから淹れたローズヒップティーに限っては、せっかくの有効成分(ビタミンC)が熱で崩れたり、強い酸っぱ味やえぐみが出てしまうので80℃以下の湯や一晩かけて冷水で淹れるのがよいとされるもの。
美容や
「王女殿下手ずから淹れていただけるとは恭悦至極」
にっこり微笑んでカップに口をつけるカルル。
「ですがお気遣いいただかなくても、ちゃんと自らの仕事と王女殿下の語学研修と、どちらも手を抜いたり疎かにはいたしませんよ」
「そう? 気を使わなくてもいいのに」
低めの温度設定で淹れる方が良いローズヒップティー。
が、実は、コンスタンティノーヴェルの上流階級の茶席の作法に、茶会で出されるぬるい茶は、何時までも居座る客に『早く帰れ』という暗喩でもあるのだ。
「ミア姉さま、カルルお兄さまがいると困る事でもあるの?」
リアナが首を傾げて、ユーフェミアを見上げる。
リアナはまだ、茶席でのぬるい茶の意味は知らないが、雰囲気が歓迎ムードではない事を感じ取っているのだろう。
「あら、そんな事はないわよ? カルルの語学力は、単語の堪能さも発音の正確さも目を見張るものがあるし、現地で学んだ豊富な広く浅い知識はとてもためになるわ。
ただ、頻繁にお招きしたら、カルルのお仕事の負担になったり、今日だって長期出張の後の、報告も休暇返上での使節団外交もやっと解放されての待ちに待ったお休みなのに、
ユーフェミアの言葉に青褪めるリアナ。
しかし、システィアーナは、迷惑云々よりも現地で学んだ豊富な『広く浅い知識』の方が引っかかった。そこは『幅広い知識』でいいのではないのか。
「カルルお兄さまお疲れなの? リアナ、我が儘だった?」
「そんなことはないよ、フローリアナ殿下。無理ならちゃんと無理だと申し上げますよ」
「本当?」
「勿論ですとも。マイプリンセス」
カルルに手をひかれ、学習用のテーブルに着くリアナ。
ユーフェミアとて、語学訓練の相手としてのカルルに不満はない。
不満はないが、幼馴染みで姉妹のように育った、大切なシスティアーナに近づきすぎるのが気に食わないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます