第14話 オルギュストの暗き未来



「想い合えなかったのは残念ですが、王戚の方を夫に迎えるに相応しい女性になる為に、ユーフェミア王女殿下と共に学んだ事は、無駄にはなりません。次に活かせるかと」


「勿論だよ。各教師達、アレクサンドルやユーフェミア、他の王子息子達からも、君は王家の姫と並んでも遜色ないほどの教養を身に着けていると聞いてるし、僕もそう思うよ。王子王女達と共に公務に付き添って、特別何か対処に困ったことはないだろう?」



 王女の学友として、王族遠戚である公爵家の子息と婚姻する身として、どこへ出しても恥ずかしくない女性である為に学んだことは、この先、誰と婚姻を結ぶ事になっても、無駄にはならない。それだけは、胸を張れる。



「わかったよ。システィアーナは優しいね。アレに意趣返しで溜飲を下げようとか、無駄な努力をさせられたり恥をかかせた罪を償わせてやりたいとか、本当に思わないの?」

「特には」

「それだけ、アレに関心がなくなるほどアレとの未来に絶望したんだね」


 絶望したのかと言えばそうとも言えるが、ただ諦めただけの事。期待するだけ無駄なのだと思ったから。



「仕方ないね。セルディオ、システィアーナに感謝するんだね。

 オルギュストは、その子爵令嬢と勝手に結婚すればいいよ。


 公爵家の子息としての心構えや騎士道を身に着けてない愚か者を、近衛騎士に取り立てる事は出来ないけど、剣術と馬術はそこそこのようだから、そのまま騎士になればいいよ。

 ただし、騎士道を学べてない内は勿論、生半可な武勲では騎士爵は取れないと思って? そもそも叙勲するのも叙爵するのも、それらを認定するのは国王である僕だから。

 そして、もし僕が退位、譲位する事があったとしても、次の王はアレクサンドルだから。あれは、僕よりオルギュストには厳しいと思うよ? ああいう手合は毛嫌いしてるからね。勿論、僕も大っ嫌いだけど」



 一見許されて、好きな娘と結婚してもいい、そのまま騎士になればいいと言われているだけのように思える。


 が、実質は、阿呆は平民の娘を娶って公爵籍を抜けという事実上の廃嫡と、騎士でいたかったらいればいいけど、出世なんかさせてやらないヽヽヽヽヽヽヽよ、と、先を閉ざされているのである。



 この部屋に居る人物の中で唯一、被害者であるシスティアーナだけが、出世しにくいヽヽヽヽのはちょっと可哀相と同情するも、総ての人物がオルギュストの自業自得だと思うのみであった。



 国王と王太子に大っ嫌いと言われるオルギュストの未来はくらそうだ。




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