第4話 強い思いと覚悟



 王女の勉強部屋に入ってきたのは、王太子アレクサンドルと第二王子フレキシヴァルト、サラディナヴィオ公爵家のユーヴェルフィオとエルネストだった。



「お兄様、今日は、お兄様が先生なの?」


「おや、メルティは、私が教師では不満かな?」

「そんなことないわ! お兄様と一緒にいられるのはとても嬉しいわ。ただ、お兄様は厳しいから⋯⋯」


「ふふふ。立派なレディになるには、ちゃんと勉強しないとね?」


「大丈夫だよ。メルティ。私も居るし、今日はユーヴェもエルも居るよ。みんな、わからないところは優しく教えてくれるはずさ」



 第一王子(王太子)と第二王子、第一王女は正妃を母に持ち、第三王子と第二王女、第三王女と第四王子は、それぞれ側妃の産んだ王子王女である。


 正妃はヴェルファイア侯爵家の長女であり、第一側妃は隣国の王女。第二側妃はタルカストヴィア伯爵令嬢であった。



 王子と王女二人に、学友としてシスティアーナとエルネストが加わり、同じく王太子が学生であった頃に学友となったユーヴェルフィオも王太子と共に、5人に政治と経済の繋がり、近隣諸国との関係性などを教えた。



 ユーヴェルフィオはすでに、領地運用の実務は父親の代行もしているし普段から補佐もしている。


 王太子も公務に外交を交えている。


 これまでの実地経験が、より深みのある教鞭を執らせ、弟妹に教えることで復習と再確認、弟妹の質問から新たな発見もあったりと、有意義な時間でもある。



「デュー兄様はお勉強しなくてもいいの? ズルいわ」


「メルティ。そうじゃないよ。デュバルディオは今、母君クリスティーナ側妃と共に、お国へ行っている。あちらで、知らない人ばかりの中、各国のお勉強をしているよ」


「えー? ホント?」



 同腹の兄、デュバルディオがこの場にいないので、サボっていると感じたのだろうか。


 母は隣国の王女であり、息子デュバルディオの外的社交お披露目と称して伴っているが、実は、隣国に対して諜報活動しているのである。


 傍目には子供を連れての里帰りである。


 この国に嫁いだ時点でクリスティーナはこの国の第二の国母であり、国王エスタヴィオの妻である。エスタヴィオに惚れ込み、夫に寄り添い、時には祖国に刃を向ける事をも覚悟しての輿入れだった。



 茶会で何度か話す機会があったシスティアーナは、その覚悟を、真似出来ない強い想いだと感じ入ったものだった。




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