幼馴染に「大切にしろ」と言われたら親友に「告れ」と言われたんだけど

月之影心

幼馴染に「大切にしろ」と言われたら親友に「告れ」と言われた

「一つ訊いてもいい?」


「んん?」




「何で悠香ゆうかが僕のベッドで寝てるんだ?」


「え?」


「え?……じゃなくて。」




 僕は葛木光輝かつらぎこうき

 健全に思春期を迎えた17歳の高校2年生。

 自分で言うのも何だが、勉強も運動もそこそこ出来るし、容姿もそんなに悪くは無いと思うし、友達と呼べるクラスメートも何人か居るし、彼女は居ないけど女子と話すのも別に苦にはならない、まぁそれなりに高校生活を楽しんでいられるポジションには居る。


 そして僕のベッドに潜り込んでいる子は天城あましろ悠香。

 生まれた時からずっと一緒に過ごしてきた幼馴染で、新生児室のベビーケースも入院していた母親同士の部屋も、そして住んでいる家も隣というお隣尽くしのお隣さんである。


 で、だ。

 この悠香、前置詞に『超』をいくつ付ければいいんだろうと言うくらい可愛い。

 サラサラの黒髪は肩より少し長いくらいで、パッチリお目々は少し垂れ目気味、長い睫毛に描いたような眉毛、真っ直ぐ通った鼻筋に、柔らかそうな唇からはにこっと笑うと八重歯が覗く。

 小学中学と水泳をやっていたせいかスタイルも抜群で、高校生になって水泳を辞めてからは女性らしい丸みが加わり、容姿に於いては上から下まで非の打ちどころの無い女性になっていた。

 では中身はと言うと、これまた勉強も運動もかなりのハイレベルだし、男女問わず仲の良い友達は大勢居るし、彼氏が居たというのは聞いた事が無いけど数え切れないくらい告白された事はあるらしい。


 トータルで見れば、男女の身体的な埋められない差は別にして、悠香は僕のあらゆるステータス……よくゲームなんかである『知力』だの『魅力』だの……を二回りくらい高くしたような子だと思って貰えればいい。

 そんなハイスペックな子が勝手に僕のベッドに勝手に潜り込んでいるのは、単に『幼馴染』という関係があるからに過ぎない。

 その辺はちゃんと自覚してる。




「そこは僕のベッド。悠香のベッドじゃないんだから勝手に入るんじゃない。」


「いいじゃん別に。眠たいんだもん。」


「だったら家がすぐ隣なんだから自分の家に帰って自分のベッドで寝ればいいじゃん。」




 言い終わらない内に悠香は再び僕のベッドの布団に潜り込もうとした。




「だから潜るなって。ほら、出て来い。」


「もぉ~……光輝、最近冷たいぞ。可愛い幼馴染はもっと大切にしろぉ。」


「大切にって……別に邪険にした事なんか無いよ。」




 悠香は布団を少し下げて目から上だけ出して僕を覗くように見てきた。




「それは私だってそう思うけど……でも減った!」


「減った?何が?お腹?」


「違う!……事はなくてお腹は減った!何か作って。」


「まぁ待て。いっぺんに答えたら意味が分からなくなるから一つずつ答えて。」


「お腹減った。」


「それは分かった。後でな。で、減ったのはお腹以外の何?」




 ぷーっとむくれた悠香が足で布団を跳ね除けて体を起こした。

 布団の無くなったベッドの上には、ミニスカートが捲れ上がって白い太腿と薄いピンク色のパンツが露わになった悠香が座る。

 気付いていないのか、敢えて直そうとしないのか、パンツ丸見え太腿丸出しのまま僕を睨んでいた。




「私を大切にしてくれるのが減った!」


「意味が分からん。それと一応僕も男なんでパンツ丸見えのまま文句言うのはやめような。」




 悠香は特段慌てた風でもなくスカートの裾を直し、改めて僕の方を見て文句を続ける。




「そりゃ文句も言いたくなるよ。前は『悠香好きぃ~』とか『ずっと一緒に居ようね』とか言ってくれたり、手を繋いでお出掛けしたり一緒にお風呂入ったり一緒に寝たりしてたのに、最近全然無いんだもん。」


「いつの話だよ。幼稚園児くらいの頃だろそれ。」


「12年くらい前?」


「干支一周してるじゃん。」




 悠香はベッドから立ち上がり、僕のすぐ前で顔を覗き込むようにしてきた。

 相変わらずクッソ可愛いなと思うものの、人のベッドに入り込んだりパンツ見られても平気にしている辺り、僕を異性として見ていないんだろうという事は分かり過ぎるくらい分かるので、それ以上の感情になるとは思えなかったんだけど。




「そ れ で も ! 光輝はもっと私を大切にするべきだと思うよ。」


「十分大切に思ってるよ。これ以上何をどう大切にしろって言うんだ?」


「思いだけでも力だけでもダメなのよ。」


「どっかで聞いた事ある台詞だな。てか力なんか持ってないぞ。」


「とにかくっ!頭の中で思ってるだけじゃ伝わらないんだから『大切に思ってる』ってのを態度で示してよ。」




 いきなり何を言い出すのか。

 悠香の事は幼馴染として大切に思ってるのは間違い無いし、改めて態度で示すと言われても何をどうすればいいのかさっぱり思い浮かばない。




「まぁ追々考えてよ。それよりお腹減った。」


「はいはい。」




 僕は部屋に悠香を残して階下に降りてキッチンに行くと、手早くハムとチーズを挟んだサンドイッチと少し甘めのホットミルクを作って部屋に持って行った。




「どうぞ。」


「ありがと!いただきます!」




 口を大きく開けてサンドイッチを頬張る悠香。

 こいつはいくつになっても何でも美味そうに食べるよなぁと、ニコニコしながら食べ続けている悠香を眺めていた。




「でも、よく私がこれ食べたいと思ってるって分かったね?」


「あれ?言ってなかったっけ?」


「うん。お腹減ったとは言ったけど何が食べたいとかは言ってないよ。」


「そうだっけ?まぁいいじゃん。食べたかったものが出て来たんだから。」




 悠香は少し頬を紅くしながら残りのサンドイッチを口に放り込み、ホットミルクで流し込んだ。




「御馳走様!美味しかった!」


「お粗末様でした。」


「じゃあ私帰るね!ありがと!」


「あ、あぁ。じゃあな。」




 さっきまで人のベッドで寛ぐ気満々だったのに、出したサンドイッチ食べ終わったら何だか慌ただしく帰って行ってしまった。

 何だかよく分からないけど、平穏な時間が訪れた事には違いないので夜までのんびりする事にしよう。




**********




「……って事がありましてな。」


『ほぇ~……葛木君って凄いね。』


「でしょでしょでしょ?もっと褒めていいよ?」


『はいはいご馳走さん。それであんた達付き合ってないってのがもっと凄いよ。』


「うん、付き合っては……無いね。」




 家に帰った私は、部屋に飛び込むと同時にスマホで親友の真奈まなに電話をして、光輝のした事を報告自慢した。

 真奈は中学生の頃にこの街に引っ越して来て知り合い、今では一番仲の良い『親友』と呼べる子だ。

 男勝りの竹を割ったようなさっぱりした性格から飛び出る素直な言葉が私には心地良かった。




『何で付き合わないの?』


「う~ん……やっぱ幼馴染としての時間が長過ぎて、何となくそういう雰囲気にならないのよね。」


『あんたはそれでいいの?』


「え?」


『だって葛木君って割と人気あるよ?ほら、飛び抜けてイケメンってわけでも無いけどこう……親近感って言うの?そういうのがあって、尚且つ誰に対しても優しいじゃん?』


「そ、そうなの?」


『ぼやぼやしてたら他の子に持って行かれちゃうよ?』


「そ、そんな事……無い……んじゃない……かな……。」




 言いつつ自信が揺らぐ。

 確かに光輝は誰に対しても優しいし、同級生の中ではイケメンでなくとも笑顔が可愛らしいという声も聞いた事がある。

 誰かが光輝を狙っているという話は聞いた事は無いけど、それは私の耳に入っていないだけかもしれない。

 そう思うと急激に不安になってくる。




「ど、どうしよう……。」


『あははっ!まぁまぁ葛木君なら大丈夫だよ。あんた以上に仲良くしてる子は居ないだろうから。』


「でも……真奈に言われて確かにそうかもって思うところもあるし……。」


『ごめんごめん、ちょっと煽り過ぎただけだから。そんなに気にしないで。』


「う、うん……。」




 そうは言われても、一度鎌首を持ち上げた不安はそう簡単には払拭出来ない。

 私は二言三言真奈と別の話をした後電話を切り、光輝の香りの無い自分のベッドに寝転がった。




**********




(悠香もああ見えて意外と繊細だからねぇ。)


 そんな事を思いつつ、私、占部真奈うらべまなは悠香と話していたスマホを机の上に置き、椅子の背もたれに体を預けた。

 悠香が葛木君との間で何かあった時は、今日のような報告自慢もあれば、そこから相談愚痴になる事もあるけど、大抵私に何か言ってくる。

 同い年ながら自分を姉のように慕って何でも話してくれる悠香は、知り合ってまだ数年ではあるが『親友』であり可愛い『妹』みたいに思っている。


(妹を不安にさせたまんまじゃ姉として失格だね~。)


 少し反省しつつ、机の上に置いたスマホを再び手に取り、アドレス帳の中から電話の相手を探した。


 『堂上勝真どうじょうかつま


 通話ボタンをタップすると、コール音がするかしないかのタイミングで相手が電話に出た。




『もっもしもし?真奈?どうした?』


「出るの早かったね。」


『え?い、いや……そうでもないだろ?』


「またいやらしい動画でも見ててタップしようとしたと同時に電話が掛かってきて押しちゃったんでしょ?」


『なっ!?何で分かるんだよ!?監視カメラでも着いてんのか?』


「あんたのする事なんかお見通しだっての。あぁ、そんな事よりちょっと聞いてくれるかな?」




 勝真は私の彼氏。

 と言っても、高校に入ってから悠香や葛木君との絡みで仲良くなって暫くしてから付き合いだしたので、まだ彼氏彼女の関係になって半年程しか経っていない。

 『俺は葛木の一の親友だ』とか自分で言っているが、葛木君は誰に対しても勝真と同じように仲良くしているように見えるので、単なる勝真の思い込みかもしれない。

 まぁ、私と勝真、悠香と葛木君の4人で遊びに行った事も何度かあって、その時の勝真と葛木君のやり取りを見れば、あながち思い込みだけでも無いかもしれないと思わされるくらいの仲の良さはある。


 私は悠香との電話のやり取りを勝真にある程度ぼかしながら伝えた。




『ん~……相手が悠香ちゃんだからねぇ……確かに少し煽りがキツかったかもしれないけど、そこまで心配する事は無いよ。』


「うん、それは分かってるんだけどね。何かいつもならもっと悠香が反論して私が諭してって感じなんだけど……必要以上に不安にさせちゃったかなと。」


『それはまた機会があれば謝ればいいんじゃない?その程度で壊れる関係でも無いだろ?』


「そうだね。」




 普段は軽い感じの勝真だが、相談に乗って貰っている時はまるで別人のように正論を言うし、雰囲気も変わって何だか『頼れるお兄さん』のような印象になる。

 こういう所に惚れたのかもしれないな。

 まぁ実際、同級生には『軽いヤツ』という印象が強いだけなのに、やたらと後輩にはモテるんだよなぁ。




『一番手っ取り早く、誰も不幸にならないのは、光輝が悠香ちゃんとちゃんと付き合うようになる事だな。』


「それが出来ていれば今頃毎日のようにキャッキャウフフを聞かされてるよ。」


『それはそれで勘弁して貰いたいけど、俺としては真奈がもやもやしたままの方が困る。』


「ふふふ……嬉しい事言ってくれるんだね。」


『まぁここは頼れる彼氏に任せとけって。』


「ありがとう。好きだよ。」


『お、おぅ。俺も好きだぜ。』


「うん。あとエ○動画鑑賞は程々にね。」


『はい……。』




 勝真との電話を終えて、少しだけ気が楽になったように思う。

 やっぱ頼るべきは彼氏……かな?




**********




 俺は堂上勝真。

 真奈の彼氏にして光輝の一の親友であるナイスギャ…ガイである。


 真奈はああいう真っ直ぐな性格をしているので、思った事をストレートに言う癖があるのだが、それが良い方向に働く事もあれば、相手に致命傷となる場合もあって、極稀にではあるが今回のように、自分の言葉を後から思い起こして反省する事がある。

 きちんと反省出来るところは俺も見習いたいと思うし、何より可愛い彼女が困っているなら手を差し伸べるのが彼氏の存在意義だ。


 俺は手に持ったままのスマホから光輝の番号を表示させて通話ボタンを押した。

 4コール目で光輝が電話に出た。




『もしもし?』


「遅いっ!電話は2コール以内に出るんだ!」


『マナー講師みたいな事言うなよ。てか着メロだからコール数分からん。』


「着メロ何にしてんだ?」


『ダースベーダーのテーマ』


「恐過ぎんだろ。」


『勝真だけな。』


「ふざけんな!」


『で、どうしたんだ?』




 光輝と話しているとついつい笑いの方へ引っ張られてしまうが、今は愛しい真奈を救う為、真面目に話さないとな。




「あぁすまん。実は悠香ちゃんの事だ。」


『悠香?どうかしたのか?』


「ん~……ストレートに訊くが、光輝は悠香ちゃんとどういう関係がいいと思ってるんだ?」


『どういうって?生まれた時から知ってる幼馴染って関係があるけど……それ以外って事?』


「まぁ有り体に言えば付き合いたいとかそういう関係性。」




 暫し沈黙。

 顔が見えないので光輝がどういう感情なのか分からないのが電話の欠点だ。

 電話のスピーカーから『ふぅっ』と光輝の溜息が聞こえてくる。




『そりゃ悠香の事は大体分かってるし付き合うのも全然問題無いけど……何か今更感無いか?』


「そりゃまぁ無いとは言えないけど。」


『それに僕だけの気持ちじゃなく悠香の気持ちもあるからね。』


「悠香ちゃんの気持ち?」


『うん。だって悠香は僕の事を男だと思ってないもの。』


「え?」


『え?って何だよ?傍から見たってそうとしか見えないだろ?』




 案外原因は単純な近場にあるものだ。

 結局、踏み出していないのは悠香ちゃんもだけど、無意識の内にそういう気にならないようにしていたのは、誰でもなく光輝本人という事のようだ。




「なぁ、光輝って悠香ちゃんの事は大体分かってるって言ったよな?」


『あぁ、言ったよ。』


「うん……そこからズレてるんだわ。」


『ズレて……ん?どういう事?』


「俺とか真奈の視線から見える光輝と悠香ちゃんは、"これで付き合ってないってのか?"って感じ。」


『はぁ?』


「しかも悠香ちゃんの熱烈アピールを光輝が華麗に躱してる感じ。」


『えええ?そんなの感じた事無いけど……。』




 今度は俺が『はぁっ……』と大きく溜息を吐く。




「光輝……もう一度訊くけど、悠香ちゃんと付き合いたいとか思わないの?」


『ん~……よく分からんな。』


「じゃあ質問変えよう。悠香ちゃんが光輝以外の男と付き合う事になったらどう思う?」


『あ、あ~……それは正直嫌かも。』


「だったらさっさと告って来い!」


『え、ええっ!?いきなり過ぎんか?』


「いきなりどころか気付くの遅過ぎるわ!」




 何か電話の向こうで光輝がごにょごにょ言っていたが、俺は『1時間以内に報告せよ』とだけ言って電話を切った。

 これで万事解決する筈だ。

 俺は机の上に入れておいたコーヒーを一口飲み、椅子に背を預けながら光輝の報告を待つ事にした。


 しっかしこのコーヒーにっが……。




**********




 何かよく分からないけど勝真から『悠香に告れ』とか言われた。

 確かに悠香とは幼馴染として付き合いも長いし、お互いに何でも言い合える関係なので、それが彼氏彼女になったからと言って変わる事は無いとは思う。

 けどそれ以前に、悠香が僕の事をそういう対象として見ているかが問題じゃないだろうか。

 今までの悠香の僕に対する態度を見れば、僕の事を異性として見ているとは到底思えないのだが、勝真から見れば『付き合っていてもおかしくない』との事……益々分からない。

 とは言え勝真が言ったように、悠香が僕以外の男と付き合うなんて事は想像したくは無い。


 ここは一つ、乗らされてみる事にしようか。

 僕は机の上に置いたスマホを持つと、悠香の電話番号を表示させて通話ボタンを押した。




『もしもし?』


「あぁ、悠香?ちょっと話せるかな?」


『う、うん、いいよ……そっち行こうか?』




 場所とか全然考えてなかったな。

 もし僕の部屋で告白して断られでもしたら、この部屋自体がトラウマになってしまいそうだし、だからと言って家が隣だからどこかへ連れ出すというのも妙な話になる。




「あ、いや、そっち行くよ。」


『分かった。待ってるね。』




 悠香が電話を切るのを確認して画面が切り替わるのを見て、急に心臓が激しく鳴り出した。

 本当に告白する事になってしまった。

 そう思うだけで、背中が冷たくなって足に力が入らなくなる。

 けどもう行くと言ってしまった以上、覚悟を決めるしかなさそうだ。




 ぴんぽーん……




 がちゃっ……




 悠香の家に行ってインターホンを鳴らすと、インターホンではなく直接玄関の扉が開き、中から悠香が俯き加減で顔を出した。




「ど、どうぞ。」




 心なしか悠香が緊張しているようだ。

 僕が何の用で来たのか知らない筈だけど……。


 悠香の家に入ると、悠香はそのまま無言で自分の部屋に向かって行ったので、僕もそれに着いて上がっていく。

 幼い頃から何度も入り込んだ家だ。

 悠香の部屋だってどこなのか、目を瞑っていても辿り着ける自信はある。

 いや、そんな自信は今は関係無いけど。


 悠香の部屋に入ると、悠香に促されるまま机を挟んで向かい合う形で座った。




「で、急にどうしたの?」


「あ、いや……その……。」




 めちゃくちゃ緊張して口が上手く動かない。

 心臓の音が外まで聞こえそうなくらい鳴っているから生きてるんだな。




「あのさ……悠香……。」


「うん?」


「ぼ、僕は……悠香の事が好きだ。その……幼馴染としても勿論だけど……一人の女性として……えっと……だから……僕と付き合って欲しい!」




 長い沈黙。

 悠香は小さく肩を震わせながら俯いている。

 やっちゃったか……やっぱそうだよな……異性として見てなかった相手にいきなり告白されたらそりゃ戸惑うって。












「はい。」












「あ……え……い、いいの?」


「うん。私も光輝の彼女になりたかったから……。」




 僕は肩の力が一気に抜けるのを感じた。

 抜けすぎてぞわぞわした感覚が背中に走る。




「そ、そっか……あ、あはは……何か……ほっとしたら力抜けちゃったよ。」


「こっこれから始まるんだから、今まで以上に私を大切にしてよね!」


「あぁ、分かってるよ。」




 僕と悠香は顔を見合わせたままお互いのほっとしたような表情を見ていた。

 生まれてからずっと一緒に過ごしてきた『幼馴染』が、今日から『彼女』になった悠香はを、僕は今まで以上に大切にしていこうと思いながら。












「何か忘れてる気がするんだけどな。」


「何かな?宿題は無かったし、晩御飯うちで食べて行くのはおばさんに連絡したし……。」


「ん?連絡……?」


「あ……。」


「あ……。」








「そうだ!勝真に報告しなきゃ!」

「そうだ!真奈に連絡しなきゃ!」

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