12るん♪ やだよ、死んじゃダメ ~探して、見つけて、看病したった~


 朝、潮騒の音に目が覚めた。詩的な感じにおきちゃった私ってば南国の乙女って感じじゃね? 蚊帳って云うの? そんなのまで下した荷物の中にあったから、それを使って寝たんだよ。何となく想像の中のリゾート生活みたいに思えて、思わず嬉しくなって顔がニヤケちゃう。ふふふ。なんて思いながらミヒャンが居ない事に気が付いた。


 「あれ、ミヒャン…ミヒャン? トイレかな?」


 まぁ、なんて云うか、寝起きは普通にトイレでしょ? 生理現象と云うか、生活習慣つーか。取り敢えず西の小川・・かなぁ。『あ、私も』そう思って、のっそのっそと寝ぼけまなこで昨日ならした小川までの道をえっちらおっちら覚束おぼつかない足取りでトテトテと歩いてく。


 「あれれぇおっかしいぞぉ? ミヒャンいない?」


 目的の小川のソコ・・に着いたんだけど彼女がいなかったんだけど、先ずは私もを足して、すっきりしたんだけど、何だろ? ……例え様のない不安感がこみ上げってくる。

 ってな訳で、ミヒャンの姿を求めて辺りを探し始める。ミヒャンをたずねて3000フィート、900mちょっとくらいの道のりよ。こっから川下の往復、多分そんくらいの距離。


 「ミヒャ~ン、ミヒャ~ンさんや~い。どこにいんの~?」


 大声でミヒャンを呼ぶけど返事は返ってこない。


 「ミヒャ~ン」


 伐採して歩き易くなった林の中の道をえっちらおっちら川沿いに河口方面へと歩いて行く。


 「ミヒャ~ン?」


 何度も何度も繰り返し名前を呼んでも彼女の返事は無いし、姿すら見えない。


 「っかしぃなぁ。なぁんでいないんだろ? ミヒャ~ン、ミヒャ~ン、ミヒャ~ンってばぁぁ。何処に行ったのぉぉぉ?」


 呼べど叫べど、彼女の姿は見つからず、ってか気配ってのがまったくない。つーか、何だろ……風の音と海からの波の音しかしないって、突然一人ぼっちになったみたいで、mjマジコワイ、ちょ、ちょ、超ぉ不安なんですけどぉ。


 「ミヒャ~ン、どぉぉこぉぉ。ミヒャ~ン、何処いんのよぉぉぉ。ミヒャ~ンってばぁぁ」



 ◇



 昨日、鉈でエイヤー、トォゥって伐採しながら探検した道を3周したけど……ミヒャンの姿は発見出来ずに、不安ばかりが募る。


 「ミ、ミ、ミヒャァァァン」


 コワイ、コワイ、mjdマジでミヒャン何処に行ったの? まさか、足を滑らせて川に落ちて溺れたんじゃ……私の思考は、不安から恐怖に変わちゃって、そんな有り得ないで欲しい事を想像しちゃったんだよ。そう思うと居ても立っても居られなくて、私は小走りから、ダッシュに変わって、踏み込む足は震えるけど、彼女の姿を一秒でも早く見つけたくて、つんのめって、転んで、起き上がって駆けだして、また転んじゃって。

 すんごい擦り傷だらけ、切り傷だらけで泥だらけになっちゃったんだけど、そんなの気にしてる場合じゃなくて。もう何が何だか分かんなくなってんだけど、とりま、もう一回小川まで行って服が濡れるのも気にせずに、そのまんま川の中をザブザブ歩きながら下流まで歩いて行くんだけど、もしもって考えが怖くて怖くて、大声で彼女の名前を叫び呼んだんだよ。何回も何十回もよ。


 「ミヒャァァァァン! ミヒャァァァァン! ミヒャァァァァン! ミヒャァァァァン! 」


 彼女を呼ぶんだけど、でも聞こえてくるのはジャブジャブと私が立てる水の音だけ。


 途中、深みがあって溺れかけて水を飲んだりしてゲホゲホとむせたりしたけど…今はそれどころじゃない。ミヒャンが…ミヒャンが……居ないって事に、在らぬ想像の所為で恐怖しかない。


 「ミヒャァァァァン……うぅ…ミ、ミヒャァァァァン……居たら返事してよぉぉぉ……あと探してないのは……船だ!」


 思うがちょっ早で、私は急いで小川から這い上がって船に向かう私の足やら腕やら、すげー泥が付いて汚くなっているけど、そんな事はどうでもいい。


 ミヒャンの顔が見たい。

 ミヒャンの声が聞きたい。

 ミヒャンの無事な姿が見たい。


 そんな一心で何回も転んじゃったけど今は兎にも角にも船に行かなきゃって思って、必死で急いで船に向かったんだよ。


 「ミ、ミヒャ~ン、ミヒャ~ン」


 タラップを上りながら、ここでも階段に躓いちゃったんだけど、ミヒャン、ミヒャンって頭の中は彼女を見つけて安心したいって、そんな思いでいっぱいいっぱいで、階段でコケてヒザとかスネとか顔もぶつけたみたいで凄く痛かったんだけど、手摺に掴まって二段抜かしで我武者羅に無我夢中で駆け上がる私。


 「ミヒャ~ン」

 

 甲板に上がって右に行く。まず、船首から船尾を回って船外の通路を走った……もう、全然、mjd超ヨユーよゆーのもーまんたい。だけど。


 「痛っ」


 通路に入る時に敷居みないのにつかっかって転んで、んで直ぐ起き上がって、そしてまた転んでって七転八倒を繰り返して船内に突撃っちゃう。んで、猛ダッシュで操舵室へ。


 「ミヒャ~ン、ミヒャ~ン、ミヒャ~ン」


 居ない。


 「ミヒャ~ン、ミヒャ~ン」


 操舵室を出てから通路を小走りで船内の小部屋を一個一個見て回る。微妙に入り組んでいるもんだから、イライラしながら彼女の名前を叫ぶ。


 「ミヒャ~ン、ミヒャ~ン」


 居ない、居ない、居ない、何処にも居ない。どんどん、どんどん焦りが湧いてきて、なんだか悲しくなってきて寂しくなってきて、泣きながら滲んだ視界で只管ひたすら彼女を探し廻る。


 「ミヒャ~ン、ミヒャ~ン、いないのぉぉ? ミヒャ~ン」


 倉庫から、彼女が監禁されていた場所も探したけどどちらにも彼女の姿はなかったんだよ。


 「ビビャ~ンっでばぁぁ、どごいっだのよぉぉ」


 もうメンタルも体力もmjd限界だった。心臓の辺りがキューってなって……何だか頭も朦朧としてきて、んで、足ももつれてきてて、腕も体もズ~ンってすげー重くって……目の前も涙で滲んじゃって、ちゃんとはっきし・・・・見えなくて。


 「うぅ……どごよぉぉ、どごにいっだのよぉぉ」


 もうダメだって思った時、目の前にまだ探してなかった小部屋が見えた。そう言えば、そこは医務室になってたとかミヒャンが言ってた気がする。いや、言ってた。

 ワンチャン、ここに居なかったらどうしようとか、ドアを開けるのが怖かったけど何となくミヒャンはここに居るって思った。何時もは外れまくっている私の感だけど、この時は何か絶対の確信があったよ。うん、彼女はここに居るって。


 だから躊躇しないで……でも足がもつれてガツッって扉に頭ぶっけちゃって……超痛かったけど、ミヒャンを見つけるんだって……彼女に会いたいって今すぐに会いたいって想いの方が大きくて、だから痛がるのは後でもいいやって。


 「ミヒャァァン」


 って思いっき叫びながらドアを開けて転がり込む様に、つんのめってドタバタと部屋に突入。


 「………て、てるよ…サン」


 「…………居たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。ミヒャァァァァァァン、ミヒャン、ミヒャン、ミヒャァァァァン。やっどみづげだよぉぉぉ」


 「ハ…イ、み…ひゃん…デ…ス」


 ギャン泣きの私の顔に、力なく微笑む彼女だったけど、もんすごく・・・・・真っ青な顔のミヒャンがベッドに上半身だけもたれ掛かって、息も絶え絶えに可愛い顔が苦痛に歪んでて………んで、下半身……ってか、股間から太ももにかけて血が垂れてた。やっと会えたって素直に喜びたいんだけど、彼女のぐったりとした状態に嫌な予感がして、慌てて傍に寄って行って具合を尋ねたのよ。


 「どどどどどどどどどうしたの!!! ななななななな何があったの!!!」


 「ア…………」


 声を出すのもキツそうだったから、一先ず横になった方がいいって思って彼女が楽になれるように部屋の中を簡単に整理する事にした。

 台風の中を逃げ回った所為なのか、医務室の中はぐちゃぐちゃで、ベッドもマットレスとかズレてたんだけど、ミヒャンを寝かす方を優先したからね……落ち着いて見回すと、なんじゃこれってぐらいに廃墟病院の病室みたいだったんだよね……だからミヒャンを抱えたままマットレスに蹴りを入れて床に落として、彼女を寝かした。


 横たえたミヒャンは、もう声すら出せない程に具合が悪化してて、んで……直ぐにベッドにちゃんと横になる様に優しくゆっくりと抱きかかえて……で、毛布を掛けてあげようとミヒャンの手に小さな瓶が握られてるのを見つけて。


 「ミヒャン、これって薬か何か? これ飲みたいの?」



 彼女は僅かに頷くんだけど、意識が朦朧としてるみたいで、それでも頑張って私の方を見ようとすんだけど、多分、見えてないんだと思う。

 だって虚ろな感じで目の焦点は合って無くて、唇も僅かに震えてて。だから、そんな苦しいそうなミヒャンに無理させちゃいけないと思って、彼女の耳元で囁くように優しく提案をする。


 「声が出なかったら、ハイだったら、手、手を握ってくれたらいいから……ハイは1回でイイエだったら握らないでいいから。ね、ね……ミヒャンにこの薬を飲ませればいいの?」


 すると、弱々しく一回私の手を握る。


 「わ、分かった。…ちょっと待ってね」


 瓶に張られているシールを読むんだけど、英語で全然分っかんなくて。読めないから、彼女に何錠飲ませれいいのかすら分かんない。


 「ミ、ミヒャン。これ何錠飲めばいいの………これじゃダメだ……1じょ…2錠飲めばいいの?」


 すると、私の手が握られるのが分かった。


 「わかった、2錠だね。直ぐにって……水は……」


 多分、ミヒャンが持って来たんだと思うペットボトルが床に転がってて、手にすると未開封だったから直ぐにフタを開ける。


 「ミヒャン、飲め………ないよね……わ、私が口移しで飲ませるしか……」


 多分、ミヒャンに質問するよか、ダイレクトに飲ませた方がいいと思った。だから私は意を決して、薬の瓶から2錠取り出して、自分の口に入れて、んで…次に水を口に含む。


 ミヒャンに負担が掛からない感じに彼女の頭を抱えて咽ない様に、少しだけ身体を起こしてあげて、そっと口移しで薬を飲ませる。


 「ゴホッ」


 「あぁぁ……もう一回」


 やっぱ体勢が悪かったみたいで、ミヒャンはむせちゃって水ごと薬も吐き出しちゃった。


 「ミヒャン、口移しで薬飲ませるかんね。ちゃんと飲んでよ」


 一応彼女に言ってから、さっきよか体勢を変えて、口移しで薬を飲ます……むっちゅ~んって。


 「…コクリ」


 よっし、あ、でも水足りなさそうだから…一回水だけ口移しで飲ませる。


 「コクリッ」


 「薬は飲んだ……効き目が出る迄どれくらいの時間がかかんだろう?……ってか、血拭かないと………ミヒャン、一回小屋に戻って着替えとか取ってくるから、大人しく寝ててね」


 返事を待たずに部屋から飛び出して、タラップなんて3段抜かしで降りてって、んで、勢い余って転げ落ちる。


 「いったぁぁぁい……まだ、我慢出来る。今はミヒャンの着替えとか、タオルに水も…それと、それと」


 小屋に向かっている間に、持っていく物を頭の中で整理して、到着と共にリュックへ必要な物を突っ込む。んで、すぐ取って返して船に向かう。


 「熱があるか……でも、出血どうにかしなきゃ」


 ミヒャンに一声かけて、ズボンとパンティーを静かに脱がしていく。気持ち的には、ガバッ! って脱がしたかったんだけど、病人にそんな事しちゃだめ……ましてや女の子、しかも下半身。


 で、脱がせた服はもう着ないからポイってして、持って来たペットボトルの水でタオルを濡らして、で、絞って血を拭きとっていく。足とか後でいい、先ずは患部と当りをつけたデリケートスポットから。


 なんとかキレイキレイして、生理用ナプキンを忘れずにショツに張って、それから持ってきた厚手のジャージを履かせた。んで次はトップスの着替えを済ませる。そんでチラッとミヒャンの表情を見ると、少し楽になった感じが見て取れたから、小屋から持って来たタオルケットとか彼女に掛けてあげる。


 「後は……待つしかないかなぁぁ」


 ようやく私も落ち着けた感じになったからミヒャンが寝ているマットレスの横にタオルケットを敷いて、座ろうとしたんだけど、私も大概すんげー汚かったから、静かにシャワー室へ向かってキレイキレイになって戻ってきた。

 んでミヒャンの寝ている横にちょこんと座り、胡坐あぐらを掻いて、改めて自分の身体を見てびっくりしちゃった。


 『うっひゃぁ、私すんげー血だらけなんですけど……どうりでシャワー浴びてる時、痛かったはずだよ。つかどんだけテンパッてたの私。ヤバくね?』


 なるべく音を出さない様に、声を出さない様に傷口を拭いて……うぎゃ! 痛ぇ…でも痛みに耐えながら自分を手当していく。

 本当は消毒とかした方がいんだろうけど……この部屋の薬は英語とかハングルだから意味ふーだし……小屋にはあるんだよね……私でも分かる様に日本語をマジックで書いた薬のたぐいがさ。正直、アンタなんで読めんの? ってミヒャンのハイスペックぶりに感心したのと私の莫迦さ加減に凹んだんだ。


 そんなこんなで、ミヒャンの息遣いも落ち着いて来たから、一回小屋に戻って消毒液とか持って来た。


 『っく、痛ってぇ~』


 心の中で悲鳴を上げながら、滲んでた血の拭き取り終了。まぁ、後でちゃんと消毒はすっけどね。ばい菌ヤバ怖っしょ。


 それからミヒャンの額の汗を拭きとったり、2時間に一回くらいの間隔で口移しにスポーツドリンクとかを飲ませたよ。

 アクア・・・ってないヤツね、病気の時は|ポカってスエってるヤツが効くからね。飲み物の種類はmjdバッカじゃね~の? ってくらい倉庫に積んであって、種類もすんげー沢山でやんの。つか降ろすのがガチで面倒だったのよこれが。

 まぁ、だけどひいこらひいこら云いながら降ろしたお陰で、今飲めてっからね。ミヒャンが絶対に必要だって云ってたのが分かった気がする……mjすげーよ。つか、まだ1/4も下ろしてないんだけどね……気が重いったらありゃしないよ。ったく。


 具合が悪いっつぅこうゆー時って、食事とか食べさせれないからポカってスエってる飲み物様様だって思った。私は、カロリったヤツ食べたりして、なるたけ・・・・ミヒャンの傍に居た。てゆーか、居たい。

 一人で小屋に変えるとか意味ないし、ミヒャンの容態だって安心できた訳じゃない。呼吸は落ち着いてるけど、まだ目覚めないし、さっきの出血だって気になるじゃん。

 何度もウトウトとかしちゃったけど、ナプキンの交換とか飲み物とか看病的な事は全力で看病した。偶にミヒャンは目を覚ますんだけど、受け答えが出来ないみたいで、暫くしてミヒャンは声を出せるくらいに回復したから、そん時に質問して、薬は12時間置きくらいに飲まなきゃいけないのも分かって、後は彼女が回復するまで付きっ切りで看病した。血の付いたヤツはちゃんとゴミ袋に捨てたりしてね。


 まぁ、途中トイレとかはいったけど。ミヒャンには我慢してタライにしてもらったよ。だって立ち上がろうとすんだけど眩暈がしたみたいで立ち上がれなかったからね。トイレまで歩けないじゃん?

 だから心を鬼にして『我慢してタライで用を済ませて』ってちょっと強めに云ったら、渋々って感じに承諾してトイレで済ませてたよ。それの処分は勿論やったよ。

 で、看病三日目に突入した昼頃に、座るくらいは大丈夫って迄にミヒャンは回復したんだよ。でも、まだ起き上がって歩いたりは出来ないんだけどね。



 ◇



 ミヒャンが重体になって、んで、なんとか助かったんだけど、まだ一人で出歩ける程には治ってない。あれから10日経つんだけどね。

 私は、まだまだ船で療養して欲しかったんだけど、ミヒャンは帰りましょうって言いだす始末。なんせ船体にでっけー穴が開いてっから“もうすぐ沈没すんじゃね?”ってくらいの大きさだから心配なのは分かんだけど、私としてはもっとじっくり養生して欲しかったんだよ。

 けどミヒャンは介助しながらトイレまで歩けるようになると、彼女は小屋に戻るって言うから、私はもう少しここに居ようって言っても私の言う事を全然聞いてくんなくて、思わず怒っちゃったんだけど、それでも戻るって……ここは危険だから、私に何かあったら死んでも死にきれないって、んな事言うもんだから、死ぬんじゃねぇって怒鳴っちゃった……反省、反省。


 んでも、感情の起伏が減げしいのは病気に良くないって昔聞いたことがあるから、すぐにゴメンナサイして、泣く泣くミヒャンを支えて下船。


 ゆっくり、ゆっくりと砂浜を歩いて、途中休憩入れて、時間をかけて小屋にたどり着いた時、ミヒャンは久々感があったみたいだけど、私は一日一回、小屋の様子は見に行ってたから久々って云う感じはしなかった。


 まぁ、何はともあれ。


 「おかえり、ミヒャン」


 「ただいまデス、てるよサン」

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