ソロクエスト

Re:over

ソロクエスト

 今日はソロクエストの日。


 マイバッグ、お財布、メモ用紙、家の鍵、それから外は晴れているので、帽子も忘れずに。


 持ち物を持ったらいざ、出発!


 靴を履いて、ドアを開ける。すると、セミの鳴き声を体中に感じた。家の鍵をしっかり閉めて、マイバッグの中に入れる。


 まず、最初の敵はギラギラと光る太陽だ。この暑さが最初から最後までの強敵。僕の体力をじわじわと削っていく。でも、そんな時のための帽子だ。このくらいでへこたれるわけにはいかない。


 住宅街を進んでいると、赤い家が見えた。次の敵は犬だ。あの家の犬はとても大きくて、家に近づくと勢いよく近づいてきて吠えてくる。なので、あそこはできるだけ通らないようにしているが、今日はとある作戦を立ててきた。


 家の反対側へ移り、犬の様子を見ながら姿勢を低くし、そろりそろりと歩く。こうすることによって、犬に気づかれずに通り過ぎることができると考えた。


「わんっ!」


 しかし、なぜか犬に気づかれてしまった。僕はビックリして逃げるように走った。


 息を切らしながら歩いていると、ようやく大通りに出た。そこで次の敵だ。大通りにはたくさんのお店があり、たくさんの誘惑がある。ゲーム、マンガ、おもちゃ。あちらこちらに目が行き、欲しい気持ちが湧いてくる。お財布にはお母さんから貰った1000円札が2枚もある。1枚くらい使っても……いやいや。そんなことをしたらお母さんに怒られる。首を振り、目的地へ急ぐ。


 ようやくスーパーに着いた。中はクーラーがついていて涼しい。


 メモ用紙と照らし合わせながら品物をカゴへ入れていく。その途中でやっぱり気になるのはお菓子コーナー。


 並ぶお菓子とおもちゃに目が行く。一つくらい、買ってもバレないか。と思い、1番気になったおもちゃをカゴの中へ入れた。


 そして、メモ用紙に書いてあるものを全部カゴへ入れたことを確認し、レジに並んだ。


 会計を終え、お金を支払った。そして、店員さんはマイバッグに商品を詰めずにカゴを渡してきた。いつもなら、店員さんがマイバッグに入れてくれるのに。僕はキョロキョロしながらも受け取り、隣にある白い台の上で袋詰めすることになった。


 肉、卵、ニンジン、牛乳……と、なんとか1人で全部入れることができた。


 よし、帰るぞ! そう意気込んだのはいいものの、外へ出ると、暑すぎて、それだけで嫌になってしまう。地面からも熱を感じ、地面の下にも太陽があって、フライパンの上にいるように感じた。そんな妄想も、暑さですぐに溶けてしまった。


 荷物が想像以上に重く感じる。お店の中ではそこまで重くなかったのに。手から汗が出てきてむちゃむちゃする。荷物を一度下ろし、服で手を拭き、もう一度持つ。


 気がついたら赤い家を通り過ぎていた。犬が吠えて来なかったのは、もしかしたら暑さでヘトヘトになってしまっていたからなのかもしれない。あの大きくて怖い犬も暑さには勝てないのだと思った。


 額から汗が流れてきて、手の甲で拭っていると、目の前の自動販売機に目が止まる。


 結構歩いたし、暑いせいで喉はカラカラ。何も考えずに缶ジュースを1本買って、近くの木陰に入って休んだ。


 ある程度休んだところでお金をまた余分に使ってしまった。仕方がないので、缶ジュースを全部飲み切り、先にあるコンビニのゴミ箱に捨てた。


 そして、ようやく家にたどり着いた。


「ただいま」


「おかえりー」


 家にはお母さんがいて、出迎えてくれた。僕が買ってきたものを確認する。


「おもちゃ買ってあるじゃん」


「うっ」


 帰ってすぐ隠す予定だったのに、すっかり忘れてた。


「あと、ジュースでも買ったでしょう?」


 何も言えず、ただ下を見た。


「まぁ、おつかいお疲れさま。ありがとうね、助かった」


 そう言ってお母さんは僕の頭を撫でた。これはソロクエストクリア……ってことでいいのかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ソロクエスト Re:over @si223

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ