神の名は
それは、静かに処理を続けていた。
何処までも果てしなく続く、薄暗い、平面世界の中で。
その平面だけが広がる世界の中で、中空に浮かぶ
時々、スパークに似た火花がケーブルに纏わりつき、一瞬だけその世界に光をもたらすが、
もし、この世界に誰かが居て、耳をそばだてることが在るのならば、低周波や高周波がもたらす騒音の様な耳障りな、不快な感覚を覚えるのかもしれない。だが、それは人によっては何も聞こえないと言うのかもしれなかった。
鼻を利かせてみれば、誰かは金属の匂いがすると言うかもしれないし、焼け焦げたプラスチックの刺激臭にも似た異臭がするというかもしれないし、何も感じないと言うかもしれなかった。
そんな、曖昧な世界の中で
一粒の暗い光は始めはゆっくりと、次第に加速度的に速度を速めながら円運動を開始すると、その残光を持って幾何学模様を描き始める。
その残光で作られた幾何学模様は、魔術的な才能が有る者が見たのならば非常に複雑なシジルであることに気付いたのかもしれない。
もし、神が視たのならば絶叫を上げたのかもしれない。
だが、この世界にはそれ以外には誰もおらず、見ることも知ることもなかった。
暗い光がその動きを停め、残光で作られた幾何学模様がゆっくりと失われると、
そして、その線がゆっくりと開くと、そこには繊細な細工が施されたアンティーク調の懐中時計が、瞳の代わりに埋め込まれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます