ソロリンぼっちのナマケモノ

まっく

ソロリンぼっちのナマケモノ

 ソロリン ソロリン ソロソロリン

 ソロリンぼっちのナマケモノ

 今日も一匹 木の枝に

 そろりと逆さに ぶら下がる



 どうも、こんにちは。


 僕、ナマケモノ。


 自分ではそんなに怠けてるつもりはないんだけど、こんな名前を付けられちゃってね。


 でも、怠けてるみたいに見えるくらいスローな動きは、僕たちにとっては大事なんだ。


 コツは木の枝と同じ気持ちになることかな。


 おそろしい鳥とか、肉食の獣に見付けられないようにしないといけないから。


 僕たちみたいなのを食べる奴らは、木の枝なんか興味ないだろうしね。



 ソロリン ソロリン ソロソロリン

 ソロリンぼっちのナマケモノ

 そろそろお腹が空いてきた

 ソロ活 ソロ飯 葉を一枚



 僕はなるべく住んでいる木の枝にある葉っぱを食べるようにしてる。


 動かなくていいし、葉っぱ一枚でお腹いっぱいになるから、なかなか無くならないしね。


 みんなも僕みたいに、ゆっくりゆっくり食べたら、少しの量でお腹いっぱいになるかもしれないから、試してみるといいんじゃないかな。


 ご飯を食べたあとは、独りでとにかく何もしない。


 じっと動かないで、風に吹かれていると、すっごく気持ちいいんだ。


 たくさんの他の生き物たちは、せかせかと動き回ってるけど、何をそんなにやることがあるんだろうって思う。


 本当にそれは、今やらないといけないのかなって。


 それぞれの事情ってものがあるんだろうけど、一度立ち止まって考えてみるのも大切だと思うけどね。



 ソロリン ソロリン ソロソロリン

 ソロリンぼっちのナマケモノ

 週に一度の お約束

 ソローリそそくさ 木を降りる



 僕は、何か嫌な雰囲気を感じてしまっている。


 今から、どうしても木を降りなきゃいけないというのに。


「おーい! そこにいるのは分かってるんだぞ!」


 目の横に傷があって、とても迫力のある顔をしている肉食の獣が一匹。

 あれはピューマとかいう奴だったはず。


 でも、まだ僕のことを呼んでるとは限らないしね。


 とりあえず、じっと動かないでおく。


「お前だよ! ナマケモノとか言うんだっけか」


 やっぱり、僕を呼んでるみたいだね。


「俺は仲間の中では珍しく鼻がいいんでな」


 確かに動いたり、音を出したりしていない。


「君はピューマ君だったよね」


「ああ、よく知ってるな」


「こんにちは」


「こんにちは、じゃねぇーよ! できれば、降りて来てほしいんだが」


 ピューマは爪を木に引っかけて、ガリガリとやっている。


「ちょうど、僕も木を降りようと思ってたところなんだけど、食べない?」


「喰うに決まってるだろが」


 そんなこと言われて、素直に降りる奴はいないと思うけど。


「君たちは木登りできるんでしょ。登られたら、僕はどうにもできないよ」


 これも運命なら、受け入れるしかないのかな。


「いや、ちょっとな」


 威勢のよかったピューマが、少しうつむき加減。


「ひょっとしたら、顔の傷って、木から?」


「う、うるせーよ!」


 やはり、落ちて怪我をしたんだね。


「すごくお腹空いてるの?」


 聞いたところで、どうしてあげることもできないけど。


「さっき、獲物狩って喰ったばかりだから、そんなには」


「じゃ、食べなくてもいいよね」


 僕は木から降りる準備に入る。


「喰わなくてもいいんだけど、喰ってもいいんだよ」


「せっかくなら、お腹空いてるときに食べたほうがいいと思うよ」


「一理あるが、喰えるときに喰いたい気持ちもある」


 ピューマは真剣に悩み始めている。


「じゃ僕が、木から降りてトイレをして、また上に戻る間の時間だけ考えてみたらどう?」


「じゃあ、そうさせてもらおうかな。って、なるわけねぇーだろ!」


 やはり、そううまくはいかないか。


「でも、お前なかなか面白い奴だから、今日は喰わないでおいてやるよ」


 どうやら、命拾いしたようでよかった。


 ピューマは「また来るよ」と言って、森の奥へと去っていった。



 ソロリン ソロリン ソロソロリン

 ソロリンぼっちのナマケモノ

 そろそろ恋の季節です

 お相手探しの ソロキャンプ



 遠くから女の子の声が聞こえてきた。


 あれは結婚相手を探している声に間違いないと思う。


 女の子のところへ行って確かめたい。

 でも、木から降りて行動するのは、危険がいっぱいだしね。


 そんなことを思っていると、ピューマがやって来た。


「ようナマケモノ。どうした浮かない顔して」


「ちょっとね」


「安心しろ。今日もちゃんと喰ってきたから」


 今や、ピューマとはすっかり友だちになっていた。

 僕のことを食べるのを諦めてないと口では言ってるけど、ここに空腹で来たことはない。


 種類や考え方が違っても、お互いがお互いを認め合えば友だちなれるんだよね。


「ピューマ君に相談があるんだけど」


 声が聞こえた方角へ、女の子を探す旅に出たい。


 それを聞いたピューマは「俺が一緒に行ってやる」と、間髪を入れずに言ってくれた。


 ピューマが一緒なら、安心して女の子を探すのに集中できる。


 危険なソロキャンプをする必要はない。


「飯はどうするんだ?」


「いざとなったら、この体に生えた苔を食べるから大丈夫」


「自分の体が弁当ってか。俺はいざとなったら、お前を喰う」


「自分にとってもピューマ君にとっても、僕はお弁当なの?」


「そうなるな」


「じゃあ、ナマケモノからオベントウに改名するよ」


 そんな軽口を叩いて笑いあった。



 ソロリン ソロリン ソロソロリン

 ソロリンぼっちのナマケモノ

 ソローリそろりと木を降りて

 そろそろ旅に出かけましょう


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ソロリンぼっちのナマケモノ まっく @mac_500324

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説