#09 チラシ
誰もいない家にその声は木霊する…はずだった。
「おかえり〜♪」
「いや…なんでいんの?」
そこにいたのは…エプロン姿で、料理をしていたであろう妹、
*
「いやー。お父さんもお母さんも旅行に行くって言って。私があそこにいる理由もないかな〜って。」
「いやいや。理由になってない。というか学校は?」
「?…今年から高校生だけど〜?」
そうだった。今年でもう妹は16歳になったわけだ。
「あぁ。そういえばもう16歳だっけか。」
「そうだよ〜。4月2日生まれだからね〜。」
「じゃ、高校は行ってるの?」
「通信制だよ〜。」
「いいのかそれで?」
「いいんじゃない?そこまで頭悪いわけじゃないし。」
「それでもだよ。いわゆる、青春とかしなくていいの?」
「それは、あーくんもだよ。青春してるの?頭いいだけの他なにも取り柄のないあーくんが…」
「おっと。それ以上は言わないでくれ。心に深い傷ができてしまう。」
手で、口を塞ぐ。
「んーんんー!」
手を離してやった。
「そういうところが青春できない理由かもね。あぁ、ご飯できたよ。食べる?」
「あぁ。食べるよ。」
あーちゃんが作るご飯ははちゃめちゃに美味しい。僕が教えたんだけど。僕が作ると、なんとも微妙な味になってしまう。多分いろんなことを適当にしてるからだと思うけど。
*
今はご飯を食べ終わって、僕が皿洗い、あーちゃんがお風呂に入っている。
『...妹なんていたんですか。』
『あぁ。言っていなかったっけ?』
『微塵も聞いてませんね。』
『ごめんって。』
『...。』
『どうしたの?』
『いや...外の方に何か...。』
『誰かいたりした?』
『いや...ううん。なんでもありません。』
『そういえばさ、さっき病院で、言ってた、朝会ったってなに?』
『あぁ、フラッターのことですね。バックに入っているんじゃないですか?』
そう言われ、バックの中を探る。
「あった...。」
中身はとてもシンプル。周辺の地図と、組織についてなど、いろいろ書かれている。
『明日行ってみたらどうですか?』
『そうだな...行ってみるか...ってあれ?』
『どうしました...?』
『営業日...書いてあるんだけど...』
『へぇ〜。珍しいですね、平日休みがあったりするんですかね?』
『明日がその休業日だ。』
『なんと不幸な...そんなことあります?』
「そんなとこでなにしてんの?」
「うわぁ!?...びっくりしたぁ...。」
あーちゃんが静かに後ろにいて、耳元で話しかけてきた。
「ふざけんなよぉ…。びっくりしたなぁ…。」
「あはは!」
「本当にさぁ…。」
「でぇ、なにをみてたの?」
どうしよう。あまりいろいろ喋るべきではないし…。
「会社のパンフレットだよ。」
「え?あーくん就職するの?」
「いやぁ、しないかな。厳しいかなと。」
「やっぱり?あー、よかった。」
「なにに安心してるの?」
「いやー。内緒♪」
「え、えぇ?」
「はい、お風呂空いたから、入ってきて〜。」
「え、ちょ、押すな。」
ぐいぐいと部屋へ押し込みように押す、あーちゃん。なんだってんだ。
「なにがどうなってんだ…」
『嫌われているよりいいんじゃないの?』
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