双子無双~過剰戦力な双子のお嬢さんは好きですか?~

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第1話ソラ&ウミ

「ねぇねぇ!兄にぃ!お願いだから一緒にやろーよ!面倒なキャラメイクは私がやっておくからさぁー。ねぇ?やろー?」


「わかった!わかったから僕の無双乱舞のデータを消そうとしないで!!」


 こうして2卵生双生児の僕、宮下海斗(かいと)が妹の空音(そらね)のいつものワガママに流され渋々Prayする事になったVRMMORPG〈Genesis World〉オンラインゲーム。


 普段どちらかと言うとタクティカルアクションゲームを好んでPrayする僕は長時間黙々と取り組むロールプレイが非常に苦手なのだが空音は凝りまくるのが大好きらしく何かしら極める事の出来る自由度の高いRPGがお気に入りなのだ。


 双子なのに何故こんなに性格に差ができたのか本当に謎だ。


 そしてコレ〈Genesis World〉。


 このゲームも一応メインストーリーはあるもののエンディングはなくゲーム内ミニゲームなどでプレイヤーが好きに凝りまくれる要素がふんだんに盛り込まれている。


 めっちゃ僕が苦手なやつ。


 どうせなら無双ものでスカッとサクサク進めるゲームをやりたい。


 でもそれをするにはキャラ育てなければ無理なんだろーなぁ。


 辛たん!


「じゃあ、兄にぃのアカウント借りるね」


「はいはい。もう好きにしてくれ」


「オーケーお楽しみにだよぉ。にしし」


 そして、空音はアバター作りを1ヶ月も掛けやがった。

 どんだけ凝り性なんだよ。


 お陰で僕もすっかり〈Genesis World〉の事、忘れてたわ!


 ◇



「兄にぃのユーザー名ウミだから」


「お前キャラメイク凝りまくる癖にネーミングは凝らないのな」


「え?だって名前は変に凝っても分かりずらいしょ?」


「まあ、そうだけど」


「じゃあ、先に始まりの町で待っててね。私もすぐINするから。あ!因みに私のユーザー名はソラだからね」


「おー」



 ドタドタと隣の自室に向かう空音を見つつ「はぁ」と溜息を吐く。


「やりたくねー」とボヤきつつヘッドレストを付けゲームを起動する。


 唐突に目の前の景色は自室の天井から見慣れない広場に変わる。


 ザワザワと人の声が木霊する。


「あ、いたいたウミぃ〜」


 目の前にツインテールの美少女が走り寄ってきた。

【ソラ】と頭に表記がある。

 どうやら空音らしい。


「空音、キャラメイク凝りすぎ」


「ソ・ラ!もう!駄目だよ!本名呼びはネット内じゃタブーなんだから」


「大して変わらないじゃん」


「いいの!もう!…でどうよこのアバター」


 クルリと一回転して自慢げにニヨニヨしている空音。


「うん。凝りすぎ」


 何だろう?説明し難いのだが、まるでイギリスおもちゃの兵隊さんの制服を魔改造したかの様なイメージだろうか?

 良く解らんけど。


「ぶぅー。この衣装力作だったのに〜」


「まあ、力作なのは良く分かるよ。というか衣装もメイク出来んのな、このゲーム」


「ちっちっち。ウミちゃん違うのだよ。このアバター改造のミラージュキットが抽選で当たったから一緒にやろーって言ったの!」


「あー。なるほどそれで僕も同じ格好なのな」


 先程から自分の腕やら足やらがチラチラ見えていたが空音の装備と同じだ。


「そうそう。お揃いなんだし折角だから双子Prayしたいなぁ〜て。どう?」


「まあ、良いんじゃない?」


「ふへへぇ〜」


 談笑していると人集りが出来てきた。


「あ、あのスクショしても良いかな?」


「え?」


「あ!良いですよ!ウミちゃんポーズポーズ!」


「は?」


 空音に両手で恋人繋ぎをされカメラ目線を促された。


「ヤバい可愛い!」


「俺もいいですか?」

「私も!」


 きゃーきゃー騒がれながら色々なポーズを求められ空音はノリノリで答えていた。

 それに巻き込まれた僕。




「ごめんなさい。今日はこの辺で」


「「「「えぇ〜」」」」


「また今度でお願いしまーす」


「しょうがないなー。ハイハイ解散ーん」


 空音の言に対し理解あるプレイヤーの一言で散っていくプレイヤー達。

 だけど、めっちゃフレンド登録が飛んできた。

 ガン無視したけど。


 そそくさと2人で移動しながら、ふと疑問が生じて空音に訪ねてみた。

「何で僕まであんなにスクショ撮られたんだろ?」


「え?そんなの双子プレイヤーだからじゃない?ニシシ」


「はあ?そんなもんか?」


 モールのサンプルケースの硝子に映った双子。


 そっくりの衣装に身にまとったそっくりな顔とツインテール。


「………」


「にしし」


「ソラ」


「なーに?ウミちゃん」


「何で僕まで女性アバターなんだ?」


「え?だって好きにしていいって兄にぃが言ったんだよ?」


「マジか」


「マジだよ!よろしくね、ウミちゃん!」


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