第1章 忘れられし森の国 エウロス

第1話 流れ星と漂流者

「あ。流れ星」


森を散歩してる最中、金糸雀カナリア色のロングヘアーの少女が夜空を見て呟く。


「あ、また流れ星! お願い事は……えっと……」


再び流れた流れ星を見た少女、リディ・フォールヴァインは慌てながら願い事を考える。

何せ、流れ星を最後に見たのは自分がまだ子供の時以来だったから。


「……やっぱり村のみんなに幸運が訪れますように、かな?」


真っ先に浮かんだのは、村の人達。

自分が産まれた時から特別優しくしてくれた大事な人達である。


普通だったら自分は、嫌われてもおかしくないのにのである。


それは何故か?


理由は村の人達がエルフで、リディはだからである。


この世界……大陸ウィルホールでは、ハーフエルフは差別等は無い。

村長である祖父と、その娘である母の話によると、昔はそこそこ酷かったらしい……


母曰く、『貴女のお父さんが村に来てから村のみんなの雰囲気も変わった』との事。


(人間の寿命って、本当に短いんだね……)


そう悟ったのは、リディが9歳の時。

自分があの時はしゃがなければ、父は助かったかもしれないのに……


その日以来、リディは少しでも村の為に自分でも何か出来る事を探し、自分なりに頑張った……と思いたい。


(……帰ろう)


そう思い、村がある方角に歩き出す。


「…もし。もし私だけのお願い事が叶うなら……」


未だに夜空を舞う流れ星を見て、リディは少し寂しそうな表情をしながらも、彼女は流れ星に願ってみる。


リディの願い。それは────


"父と同じく、優しくて、ハーフエルフである自分を受け入れてくれるような人間と恋をしたい"


そんな小さな願い事だった。





綺麗な流れ星を見た翌日。


窓から差す太陽の光で私は目を覚ます。


「ふわ~……うっ、ちょっと眩しい」


軽く背伸びをして欠伸、ほんとは二度寝をしたいけど、母さんの手伝いをしなきゃいけない。


…今日の朝ご飯は何かしら?


寝巻から、いつもの服に着替え、思い出のペンダントを身に付ける。


「これでよし!」


身だしなみチェックし終えた私は自室を出て、階段を降りて一階に向かう。


「おはよう、母さん」

「あら、リディ。おはよう♪ 今日はいつもより早いわね?」

「いつも通りだと思うけど……」


首を傾げながら答える私に母さんは、いつもより起きる時間が若干早いと言った。


「あれ? そういえばお爺ちゃんは?」


この村の村長であり、母さんの父……私から見れば、お爺ちゃんの姿がなかった。

いつもならそこで座ってお茶を飲んでるのに……


「すまんのう、少し遅れたわい!」


そう思った矢先、お爺ちゃんが帰ってきた。


「お爺ちゃん、おはよう」

「おお、おはよう。そうじゃ! リディや、ちょっとお使いを頼まれてくれんかの?」


思い出したとばかりに私にお使いを頼むお爺ちゃん。

なんでも昨夜の流れ星が奇妙な光を放ちながら森の近くの海岸に落ちたらしいので、それを見て来てほしいとの事。


「本当は村の誰かに行かせたいんじゃが、みんなも忙しくての……」

「仕方ないわよ。みんな香草の管理とか果物の管理をやってて忙しいんだもの……」


お爺ちゃんの言葉に母さんが代弁した。

この村では毎朝、香草や果物の管理をみんなで行っている。


「分かった。私ちょっと海岸まで見てくるね?」

「気をつけて行くのよー?」

「はーい!」


海岸に向かう途中で魔物モンスターにも遭遇するかもしれないので、弓を持ち、私はドアを開いたのであった。





珍しく魔物に遭遇する事もなく目的地の海岸に着いた私。


「海岸に着いたのはいいけど……特に何も…………あら?」


遠くて視えないけど、人型の流木のような物体を発見した。

気になったので近寄ってみると……


「これは……嘘っ!? 人間!? しかも見た事ない服を着てるし……。どうして、こんなところに倒れているのかしら?」


流木かと思われた物体の正体は見た事もない服を着た人間だった。


縹色はなだいろの髪色に、ほんの少しだけ長めのショートヘア。着用してる服の感じから見て、男の人……だと思う。


「ど、どうしよう……助けた方がいいのかな? で、でも……」


このまま放っておくわけにもいかなかった。

いったいどうすればいいのかと、私が思った時だった……


「……う、うぅ……ん……?」


倒れてた男の人がうっすらと目を覚ました。





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