異世界に転生転移召喚? 何それ知らないけど?

ゆるポメラ

第0話 異世界転生ですか? いいえ、転生転移召喚です

「……で、貴方は誰ですか?」

「ワシは神じゃ」

「いや知らないけど」


絵に描いたような神を名乗る老人は、僕の疑問にそう答えた。


「ワシに誰と訊いておいて、その反応は酷くないかの!?」

「すみません、思った事を言ってしまう癖が偶にあるので」


そう呟きながら周りを見渡す。

何も無い真っ白な空間。目の前にいる老人が神というのは納得した。


……とりあえずだけど。


「ところで自分が既に死んだ事に関しては覚えておるかの?」


自身の髭を軽く撫でながら、老人は僕に訊ねた。


「一応。高校2年生に進級したばかりの5日目の朝に、登校中にバイクに轢かれてたのは覚えてますね」


そう。

僕は5日前に高校2年生に進級したばかり。

登校中、学校の校門前を通りかかったバイクに轢かれてしまい、今に至る。


最悪な死に方だったよ、うん。


「それでじゃ。お主には……」

「テンプレ的な流れで異世界に転生ですか? 知らないけど」


老人が言おうとした事を遮るように言ってみたが、苦笑いしながら少し違うと言い返された。


「コホン。もう一度だけ言い直すぞ? お主には異世界にして、第二の人生を過ごしてほしい」

「何それ? 知らないけど」


聞き慣れない単語を僕に告げた老人……もとい神。


「なんですか? 転生転移召喚って?」

「簡単に説明すれば、全部の要素が合わさった異世界行きじゃ。もっと簡単に言うと例外的な異世界行きじゃの」

「……」


僕の疑問を老人は簡単に……というより、ざっくり纏めてくれた。これ以上考えると頭痛になりそうだ。


「さて。異世界に行く前に質問じゃ。特典は何がよいかの?」

「あー、それって異世界転生とかでよく聞く『転生特典』ですか?」

「そうじゃ」


うーん、特典かぁ。じゃあ……


「決まったかの?」

「はい。えっと、『7つだけ自由に能力を創る事』がいいです。その内の2つはここで直ぐ作りたいんだけど」

「なんかワシが思ったのと違うが……よかろう」


そう言うと、老人は手に持っていた杖を軽く振るった。

するとどうだろうか? 僕の周りを中心に虹色の光が纏ったが直ぐに消えた。多分、特典が行き渡った証拠なのだろう。


「それで? 7つの能力の内、2つを直ぐ作りたいと言っておったが……何にするんじゃ?」

「……1つめが『着用してる服の創生と強化と即時修繕』、2つめが『一部の怪我の自然治癒と虫歯の自然治癒』です」

「しょ、しょうもないのぅ……ま、まぁ、お主がそれを望むのなら構わぬが」


僕が作りたい能力を言うと、老人は唖然とした表情しながらそう言った。


「あ、質問いいですか?」

「ん? なんじゃ? 遠くから見たら女の子にも見えなくもない高校生男子、水無月燕みなづきつばめ

「……うちの家族全員に喧嘩売ってるの?」

「す、すまんすまん……冗談が過ぎた。して、質問はなんじゃ?」


僕の放った殺気に気づいたのか、即座に謝る老人。


……全く。言っても良い冗談と悪い冗談があるのも分からないのかね?


「転生転移召喚って事は、赤ん坊からやり直しなんですか? それとも生前の……高校生の時の姿なんですか?」

「後者の方じゃの。お主もその方がいいじゃろう?」

「そうですね。何せ高校生活を満喫していないので」


なるほど。それは嬉しい情報だ。

まぁ、異世界で残りの高校生活を楽しむのも悪くないだろう。


「さて。そろそろ時間じゃ。お主をこれから異世界に送る」

「はーい」

「聞き訳が良いのぅ……お主の第二の人生に祝福があらんことを」


手を振りながら笑顔で僕を送る老人。


そういえば異世界の何処で目覚めるんだろ?


典型的なのは草原? もしくは森? それとも何処かの王国の城の中?


……ま、知らないけど。

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