@johnpati

田園

 だらりと汗が顳顬を伝った。チェーン店が左右に並ぶ国道から少し外れると、一面には田畑が広がって、脇に流れる用水路は清冽な水を湛え陽光を浴びる。無闇に黒いアスファルトが照り返しで体力を奪っていく。

 テスト期間最終日で学校は午前で終わった。自転車で四十分かかる通学路をどうしてか歩いている。かれこれ一時間は過ぎて、後悔の念に襲われた。というか歩き出した時からわかっていたことなのだけど。

 ここにはなにも無い。とはいえどこにその"なにか"があるのかはわからない。ここには無いということしかわからない。

 

 ここにはなぁんにもないなぁ。


 石ころを蹴飛ばす。けど夕日の出る時間ではないし、星に祈ったことなんか一度もないし、油に塗れたこともない。言うまでもなく頬杖をつくあの子もいない。


 君はどこへもいけない


 家に着いた時には日が傾き始めていた。踵が割れるように痛んだけど、それほど悪い気はしなかった。

 風呂に入って布団に入るとすぐに眠ってしまった。

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