第6話「初任務」

第6話


「お帰りなさーい。夕食もうすぐできますよー。」


俺が銀の帽子亭に戻ると、看板娘の子が出迎えてくれた。

あ、そういえばこの娘は何て言うんだろ名前?


「えーっと、ただいま戻りました。もうすぐできるなら、ここで待っていても構いませんか?」


そう俺が聞くと「いいですよー。」と許可を得たのでここで席につき、夕食ができるまで少し考え事をすることにした。


うーん、まず知力が計測不能ってのは異常に高いってことだとするとしよう。これは単なる憶測でしかないが、実際レイスさんの反応を見る限りこれは明白だ。さて、そうするとベルリオンとやらと戦った時に咄嗟に熱強化を生み出せたり、すぐに動けたのは知力が主な要因だと考えられるな。確かレイスさんが知力の値は魔法とかステータスを上げたり生み出したりする応用力、効率など多くの事を左右すると言っていたしな。ならば鍛えたり、論理的な思考を働かせたら熱を利用して、かなり早く強くなれるってことか。

さらに、恐らくだが転生者が俺の他にいたとしても皆んなが皆んな知力が計測不能なんてことは無いと思うんだよな。レイスさんも本当に初めて見たというような感じの反応だったし。

まぁ俺の場合、知力が計測不能というほどに高いのは、神様直々に頭が良いって言われたこととか、ここより技術が進んでる世界に住んでたってことが影響していたのだろうな。勿論俺自身も幅広い分野で研究を重ねていたからそれらもあるかもしれないが。

まぁ何にせよそれなら、これからどんどん量子だとか宇宙論だとか熱、化学とかの知識を使って自分を強化できる可能性があるってわけか。マジか超楽しそうじゃん。というかそう考えると"熱"ってかなり最強に近いんじゃないのか?


俺はそんなふうに考え事をしていると自然に笑みがこぼれてしまっていた。そんな俺は興奮が冷め止まずにいたが、色々試すとしたらまぁ明日以降だろうな。


「お待たせしたー。どうぞ召し上がってください。」


すると看板娘の子がそんな考え事をしている俺の元に料理を運んできてくれた。


「ありがとう、頂きます。あ、そういえば君のことなんて呼べばいいのかな?」


「え!あ、はい。リリアと呼んでください。常連さんは皆んなそう呼びます。」


「分かった。ありがとうリリア。」


リリアっていうのか。

おいどこぞのお前ら別にナンパじゃねぇぞ。


さて、今日の夕食はというと何かは知らないが焼き魚と何かのステーキ、サラダ、スープだ。

量が多いかも?と少し心配していたが、全くそんなことは感じなかったし、控えめに言って全部めちゃくちゃ美味かった。



その後俺はリリアに「ご馳走さま、美味しかったです。」と声をかけ、自分の部屋に帰った。


***


「何か随分久しぶりに帰ってきた気がするなぁ……。まぁそれもそうか、今日一日はかなり濃い一日だったからなぁ。

さてどうするとしようか?一旦強くなっていくために俺が知ってる中でいちばん効率が良くて効果ある筋トレでもするか。それでどんくらいステータスが上がるかも知りたいし。うーん、とりあえずスクワットと腕立て伏せと体幹トレーニングでもするか。」


何も今すぐステータスが上がるかも何てことは思っていないし、そんなことはあり得ないが継続して鍛えるということは少なからず必ず効果はあるはずであるからやるべきだ。


「さぁやるか!」


そう言って30分〜40分くらい筋トレをした。これはあくまで体感でしかないが。実は筋トレは1時間とか長時間やってもあまり効果がない。だからこのくらいが丁度いいのである。


「うーん、久しぶりに筋トレしたなぁ。めちゃくちゃ痛いんだが……。まぁ全く筋肉痛がなくて効果がないって思うよりかは全然いいけどさ。ふぅ…もう今日は疲れたから寝るとしよう…………」


そういって今日というとても濃かった一日はついに幕を閉じた。


***


「んっんぁー。よいしょっと」


俺は目が覚めて、部屋の窓を開けに行こうとした。そこで立ち上がった時に気がついたのだが、もう既に昨日の筋トレによる痛みが感じられなかった。


「何か治癒力高くねぇか俺。」


俺は自画自賛のようなことをしている。

ちなみにステータスを確認したが何と数値は攻撃、防御、体力ともに軒並み10ずつ増えていた。


「やっべぇなこれ。1日ちゃんと筋トレしただけで、しかもたった一日で10も増えんのかよ。効率やばくね。てかこれ何日も続けてたらもっとヤバいことになるぞ。」


筋トレというのはある一定の波があるらしいが波のいちばん高いところ、つまりピークにあたる部分が初日に来るということはまずないのだ。つまり今日を含め、ずっと継続していたらかなりのステータスアップが見込めるのである。まぁ毎日ステータスが伸び続けていくとは考えていないが。


「さて、今日は朝ご飯を食べた後は、冒険者協会で依頼を探しつつ、行けたら魔の森とやらで魔法を編み出したいな。イメージ出来てるものが結構あるし。」


まず大前提としてまだ俺は魔物という生物を見たことも、勿論対峙したこともない。だから戦って勝てるかなんてことは分からないが、今の時点で戦うには戦闘手段を増やし、戦略を立てる他ない。だから手っ取り早く使用魔法を増やすというのが最適解なのである。


「さてと、今これ以上考えても仕方ないな気がするから取り敢えず朝ご飯食べに行くか。まず脳に栄養を入れないとまともに働いてくれなさそうだし。」


***


その後俺は朝ご飯を食べたあと、昨日も行った冒険者協会へと向かっていた。

そんな俺がギルド(冒険者協会)の中に入ると何だか昨日に比べてさらに多くの視線を感じた。まぁ昨日のような騒ぎを起こしたら当然かもしれないな。


「おはようございます、エレナさん。今日は初依頼を受けようかと思うのですが、何か良いものはありますか?出来れば戦闘系があるといいのですが。」


「あ、ソラさん。おはようございます、はい依頼ですね。そうですね……いくら特例飛び級のソラさんとはいえ初任務なので、取り敢えずゴブリン退治とかはいかがでしょうか?」


うむ、難易度とかは全く知らないが最初はゴブリンとかの方がいいだろうな。ゴブリンは恐らく魔物の中でも最弱に近い魔物だろうし。まぁ魔物の強さの基準にもなるか。


「はい、ではそれでお願いします。」


そう言って、俺はエレナさんからこの任務の説明を受ける。


「はい、それではこの任務の説明をします。今回は初回ということもあるので不安な点や質問があれば、遠慮なくどんどんして下さい。

えー、それではまずこの任務の成功条件ですが、ゴブリンの討伐5体です。そしてそれ以上討伐した分は全て素材換金で引き取ることができます。それと討伐証明部位として、ゴブリンの耳を取ってきて下さい。えー、討伐場所としめは書いてある通り魔の森です。質問はありますか?」


なるほど、とりあえずゴブリンを5体以上倒して耳を持って帰ってくればいいんだな。


「大丈夫です、理解できました。」


「はい、それでは気をつけて行ってらっしゃい。」


そうエレナさんに見送られ俺は初任務で、魔の森へと向かった。

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