第12話

 口ではどうとでも言えるという。

 口に出すことすら憚られるとも言う。

 言えることもあれば、言えないこともある。

 それは、善意も悪意もあるだろう。

 外から見分けることはできるのか。


 昼間の男性に連れられたのは家だった。

 女性がいた村にあったような急拵えの家ではなく、ゆったりとした生活空間があり、施錠することで外から隔絶される家だった。

 二人は本物の家を目の前にして、目を輝かせるように大きく見開き、同じように口を開いていた。

「おいおい。そんなたいそうなものじゃないぞ」

「いえ、私がいた村にはこんな立派な家はありませんでしたから」

「そうかい。住む場所が違うと生活の仕方も違うからねぇ。ま、俺としては慣れていたけど、そんな反応してくれると照れるねぇ」

 男性ははにかみながら頭をかいた。そして、喜んで二人を家に招き入れた。

 丈夫な鍵のつけられた家に。

 ここでは、他人の家に入る機会はそうそうない。招くにしても気心知れた間柄でのみ。

 同情の念が多分に含まれていようとも、男性が二人を信頼していることが窺えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る