二月十一日 てんりゅうとくめじま


 本日は建国記念の日。そして俺の最期の満艦飾を披露する日である。すぐ後ろにてんりゅう、同じバースにはいなづまを筆頭に護衛艦がずらりと並んでおり、なんだか懐かしい気持ちになりながら、てんりゅうの【艦霊ふなだま】である天嶺あまねとバースからはためく満艦飾を見上げる。

「若い頃に戻ったみたいだ」

「あー、くめ呉にいたんだっけ?」

俺の呟きを天嶺が拾ってくれる。

「そうそう……てんてんっていつ就役だったっけ?」

「十八年前の三月だな。くめいた?」

「居たかなあ? ギリギリ四二掃行くか行かないかくらいだな」

二人で並んでタバコを吹かしながら満艦飾のマストを眺める。五色の旗が青い空によく映えている。

「あんまり記憶ない、かも」

「俺もない」

そんなもんだよなあと二人同時に乾いた笑いが出る。今日は天気がいい。風もここ数日で一番穏やかで暖かい。明日にはゆげしまも帰ってくる。賑やかになるだろうと想像しながら新しいタバコに火をつける。吐き出した青い煙の一陣が空に吸い込まれたその時、チラリと小雪が降りてきた。

「あー、明日、寒いだろうな」

「だな。てるてる坊主作るわ」

「UWって書く?」

「じゃあ書いて」

てるてる坊主を作るべく、てんりゅうの艦内に入る。効果があるかは明日のお楽しみだ。


 もう見えぬ伊勢湾へ愛をこめて。

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