三月十八日 しょうりゅうの就役

 本日はお日柄もよく……なんて言いたくなるようなそんな陽気の神戸はいつだって騒がしい。春休みに入って浮かれる学生や、スーツをビシリと着込んだ勤め人が途切れることなく街を往来する。そして、それは港も同じで、観光客を乗せた遊覧船や船の出入りを手伝うタグボート、少し離れたところにはこれから瀬戸内海を目指す貨物船の姿も見える。まるで絵画の一場面のような光景である。それが神戸の港の日常だ。


 鳴り響く軍艦マーチ、今日は一隻の真新しい鉄の鯨が海にでるのだ。ドックの中でも特に関わりの深かった者はどこかそわそわとしており、隙を見ては潜水艦のはいっている大きな箱のようなドックに目をやっている。音楽が鳴り止むとすぐに黒い艦が顔を見せた。帽をふる乗員の中には見慣れた肩章をつけた者の姿が見えた。独特の肩章をつけた男……【しょうりゅう】も僕に気がついたようでニコリと歯を見せて笑う。そして次の瞬間には目を丸くする。どうやら垂れ幕にも気がついたらしい。

「がんばれ【しょうりゅう】」

君の長い航海が安全で幸せであることを願う。

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