十月九日 台風十九号(泊避) ゆげしま
人生最後の晴れ舞台、観艦式が目前に迫った本日。どうにもこうにも台風の進路が悪い。担当者がテレビや気象データと睨み合っていたが、ついにその号令はでてしまった。
「
さて、問題は泊避することよりも台風が観艦式の当日に直撃することである。もし仮に進路が逸れて、観艦式が決行されることになったとしても、我々掃海艦艇は瀬戸内海に泊避する。全速力でも15knot《のっと》の足では、観艦式に出ることは不可能だ。
「……さては、観艦式でれない……いや、出るつもりがないっていうのが正しいか」
【
出港ラッパが鳴り響く。艇は岸壁を離れ母港のある瀬戸内科に進路を取る。さらば横浜。また来る日まで。
余談ではあるが、後日海上自衛隊が作成した『バーチャル観艦式』にも俺の姿はなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます