第70話真冬の絶叫

「え、な、なんで真冬のクラスに─────」


「真冬さ〜ん」


「ちょっ…!」


 俺の言うことなんて聞かず、この人は真冬の名前を教室中に聞こえるような声で呼ぶ。…ど、どうする、に、逃げるしかない…

 でもここで逃げてもまた今後ずっと絡まれたりしたら想像できないぐらいに面倒なことになるか…

 しばらく待っていると、真冬が教室から出てきて俺の前まで来た。


「誠、くん…?どうしたの?」


 真冬が出てくると同時に、その上級生はどこかに行ってしまった。

 …え、嘘だろ!?こんな一触即発な状況作るだけ作ってあとは放任主義だから任せますって感じなのか!?ど、どうしろっって言うんだ…!


「な、なんでもない、っていうかなんにもない!」


「なんにもないのになんで来てくれたの…?」


「え、あー、いや…な、なんか無理やり連れて来られて…」


「大変だったね…」


「……」


「……」


 いや気まずい!教室に戻ろうにもこんな気まずい状態で別れたらまた今度会ったときにさらに気まずくなる…

 俺がそんなことを思っていると、真冬が口を開いた。


「ねぇ誠くん、あの女の子と付き合ってるっていうの、ほんとなの?」


「え、え…?いやいや!あれはただの噂だから別に付き合ってなんてない」


 って、付き合ってた時の癖がまだ染み付いてるな…もう真冬とは付き合ってないんだからこんなに焦って弁明する必要なんてないのに…


「…誠くん、私は本当にいつでも待ってるからね」


「待ってる…?」


「うん、誠くんが私とやり直したいって思ってくれたら私はいつでも受け入れるから」


「…わ、わかった」


 そこで俺はその誘いを断り切ることはできなかった…

 実際、何かあと一つ`大きなきっかけ`があれば真冬とはもう一度やり直しても良いと思っている。

 一度別れてもう一度付き合うとなれば、真冬だって前別れる原因になったことを考えてくれるだろうし、束縛さえなければ真冬とは本当に今すぐにでも付き合って良いと思っているぐらいだ。


「そ、それでね…誠くん」


「…ん?」


「…ううん、また会おうね」


「…ん?あ、あぁ…」


 よくわからないことを言い残して、真冬は自分のクラスの教室に戻っていった。…また会おうねって、まぁ学校にいたらいつでも会えるしあんまり気にする言葉でもないか。

 俺は自分の教室に戻って、花龍院とるながいる自分の席に戻った。


ー真冬Partー

「ありがと」


「は、はいっ…!失礼します!」


 私は放課後の帰り際に一つ年上の男に感謝の意だけ述べるとすぐに自分の家に帰った。


「…はぁぁぁぁぁぁぁ」


 誠くん以外の男なんて無価値だと思ってたけど、今日だけは良い働きしたかも。

 誠くんが今日私のところに来たのは私があの上級生に「今立ってる噂の詳細と誠くんを私のところまで連れてきて」って言ったから。

 それだけであそこまでの働きをしてくれるのは正直予想外だった。


「…それにしても…」


 緊張したぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 誠くんと話す度に心臓が破裂するんじゃないかって思うぐらい本当にいつも心臓が脈打ってる…


「でも、あれは断られちゃうと思ってたけど、誠くんは断らなかった…」


 私が「誠くんが私とやり直したいって思ってくれたら私はいつでも受け入れる」って言った時、誠くんはやり直すとは言わなかったけど、一応は理解したっていう返事をしてくれた。

 ─────もしかしたらあと一つ何かあったら、誠くんとやり直せるかも…?


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 私は文字通り絶叫して、布団に飛び込む。


「そしてそのあと一つが誠くんとマユとして会う日…!7月…!」


 …この前会う約束した時多分誠くんは、私のことを見て逃げたのかもしれないけど、今度は絶対に誠くんを逃さない。

 ────もし逃げたら何をしてもいいって、マトくんの言質も取れたしね…


「あぁ、誠くん、本当にあともう少しだよ…!」


 私は`その日`に今から楽しみを馳せて未来を希うようにゲームの世界にログインした。

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