第66話妹に恋はしない
『ピンポン』
そんな音が家中に響いた瞬間に、俺は待ち構えていた玄関からすぐに出る。
誰かが来るとわかっているとそわそわしてそれ以外のことに手がつかず、結局玄関で待つことになってしまった…ということはきっと俺が人間関係が希薄で誰かが迎えに来てくれることに慣れてないから起こりうることなんだろう…
「はい…」
俺はるなが家の前で待っているだろうことを想像して玄関のドアを開けると、案の定ルナが佇んでいた。
「…マト…」
るながどことなく気まずそうな感じにしている…まぁ、昨日あんな感じで別れたし、無理もないか…ここは俺が雰囲気を作らないとな。
「る、るな、本当に気にしてないから気にしないでくれ」
「…うん!」
るなの目に精神的な意味で輝きが戻り、一緒に登校することにした。
「ねぇ、マト、今日も明日も、遊べる…?」
「……」
そういえば明日は琴葉の学校に授業参観に行かないといけないんだった…俺なんかが行っても大丈夫なのか?
俺以外は多分みんな親とか少なくとも大人だろうし…絶対場違いだろうな。
…やっぱり琴葉に言って明日のことなしにしてもらおう…と思ったけど昨日のことを持ち出されたらなぁ…
「…やっぱり、ダメ?」
るなが今にも泣きそうな目で俺のことを見ている。
「ち、違う!今日はできるけど明日は妹の授業参観に行かないといけないんだ」
「明日、学校、休み、じゃ、ない、の?」
「妹は違う学校だから休みの日とかもズレてたりするんだ」
「妹……」
るなは少しの間黙り込んだ後、口を開いた。
「…マト、妹のこと、好き…?」
「…は、は?す、好き?ど、どういう意味で…?」
俺がそう聞くと、るなは即答した。
「恋愛、感情」
「あるわけないだろ!」
今度は俺も即答する。
「…でも、妹、可愛い、かった…」
確かに琴葉は兄妹である俺から見ても可愛い。でも…
「だからって妹に恋愛感情なんて抱くわけないだろ!」
「…可愛い、くて、一緒に、いて、も、恋しない、の?なん、で…?」
「なんで…な、なんでだろうな…」
問われてみると妹だからとしか言葉が出てこないな…
「るなは一人っ子なのか?」
俺がそう聞くと、るなは小さく首を振った。
「え、な、ならこの謎の感覚が分からないか?」
兄弟がいるならこの異性でずっと一緒にいるのに恋愛感情を抱けないこの感覚がわかるはずだ。
「私、姉妹、で、2つ上の、お姉ちゃん、1人、だけ、しかも、ほとんど、帰って、こない…」
なるほど、異性じゃなくて同性なのか…それならこの謎の感覚が理解できなくても納得だな。
「そろそろ学校に────危ない!」
俺は咄嗟に出てきた車にるなが轢かれそうになったので、るなの右手を引っ張ってなんとかそれを回避する。
「ほっ…よかった」
「…マトと、現実でも、手、繋いでる…」
「え、あー、いや、悪い!」
俺はすぐに手を離そうとするも、るなは手を離そうとしない。
「…学校まで、このまま…行こ…?」
「えっ…」
俺はちょっと今の状況的に断りずらく、もうすぐそこに迫っている学校まで手を繋いで一緒に登校した。
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